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第9章(5)雪side
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しおりを挟む「っ、痛い……」
「これ位で痛いとか言うな雑魚。
……ホラ、騒ぎになる前に行くぞ」
咄嗟にデコピンされた額に手を当てると、響夜はオレのもう一方の手を取って歩き出した。
ーー……っ。
驚いた。
手を、繋いでくれるなんて思わなかった。
手、結構大きい……。
それに、あったかい。
手袋越しから伝わってくる温もりは、じんわりとオレを暖めてくれた。
すると、マイナスな事ばかり考えて思い詰めていた心が、いつの間にか冷静になっている事に気付く。
……なんか、不思議。
嫌な感じが全然しない。
「……。
ねぇ、何で……助けてくれたの?」
手を引かれて歩いていたオレは、顔を上げて響夜の背中を見つめながら尋ねた。
「オレの事、嫌いなんじゃないの?」
すると響夜は、そのまま歩きながら答える。
「……お前、馬鹿か?」
「え?」
「僕が善意でお前を助けると思うか?
親父に命令されて助けて、このままお前を親父に渡す、って考えはないのかよ?」
「あ、……そっか」
言われて初めて、その可能性が1番高い事に気付いた。
このまま橘さんの元に連れて行かれるーー……。
確かに、以前の響夜にならそう感じただろう。けどーー……。
「ーーでも。違うよね?」
「……」
「今は、そんな事考えてないでしょ?」
これも魔物の血の影響なのか、勘が鋭くなってる気がした。
響夜がオレをどう想っているのか分からないが、少なくとも今は、敵意を全く感じなければ、嫌われている、とも感じない。
じっと背中を見つめていると、急に響夜が立ち止まった。
あまりに急だったからオレの身体が追い付かなくて……。そのまま響夜の背中に顔からダイブ。
また「何やってんだ雑魚」とか「グズ」って怒られると思ったが、響夜は意外にもそんなオレを支えてくれると、振り返って言った。
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