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第9章(3)雪side
9-3-1
しおりを挟む人形みたいに可愛いな、って思ったーー。
それに、何よりも女の子らしい。
色白の肌に、細い指に綺麗な爪。太ってる、って訳じゃないのに、胸も程々に大きくて、お尻も小さいのに柔らかそうで……。オレとは、全然違った。
男のクセに色が白くて童顔で……。それなのに、手は剣ダコや手荒れでガサガサで、爪の形もガタガタ。痩せっぽっちで、胸なんて当然なければ、触って柔らかい、なんて感じる部分はないに等しいだろう。
女の子みたい、ってよく言われたけど、実際に見比べると全然違う。
オレは、中途半端だ。
男っぽくもなければ、女の子になれる訳でもない。
比べるまでもない。
誰の目から見ても、どちらが紫夕に相応しいか、なんて答えは出ていたーー……。
「久し振りだな、カレンちゃん!元気そうで良かったぜ」
「ありがとうございます。三月さんも、お元気そうで何よりです」
「ははっ、カレンはな~三月さんが来るのをずっと待ってたんだよ~?」
「!っ、ちょ、お父さん!」
「何だよ~?ホントの事だろ?
な、三月さん!良かったら一回コイツとデートしてやってよ!」
紫夕とカレンさんが会話をしていたらそこに店主さんが加わって、そんな話が飛び交う。
好意を寄せてくれている可愛い女の子に、そのお父さんも良い人そう。
その光景を目にして、思わずにはいられない。
……この子となら、紫夕は普通の、幸せな未来を築ける。
三人を目の前にして広がるのは、自分では決してあり得ない眩しいばかりの世界だった。
オレがいなくなっても……。
ううん。オレが消えた方が、きっと紫夕は……、……。
そんな想いが浮かんだ。
オレはそっと繋いでいた手を解いて、ゆっくりと後ろに下がって、その場を去ろうと思った。
でも、……。
「あ~、わりぃ!俺、もう居るんだ。大事なやつ!」
ーー……っ?!
引きかけた身体を、そう言った紫夕にグッと引き寄せられる。
オレの肩を抱きながら、紫夕はそう言ってくれたんだ。
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