173 / 589
第9章(1)紫夕side
9-1-2
しおりを挟むこっそり今後の暮らしの事も考えてた。
この森の中にある家は近くに桜の木もあるし、あまり一般人は来ないから最適だが、橘やその関係者達がいつやって来るか分からない。
風磨の事も気になるし、あの事件から橘達がこの家を訪ねて来たり、何のアクションも起こして来ないのが不自然過ぎる。
俺達を静かに見守ろう、なんて、そんな考えは絶対になくて……。今のこの平和な生活は、嵐の前の静けさに違いないと思った。
だから、俺は雪と紫雪と一緒にこの家を出て、旅をしよう、って決めたんだ。
守護神を出る時にパクッてきた車は丈夫で山道や荒地も走れるし、隊員や荷物が詰め込めるように後ろが広い。そこを改造して、キャンピングカーとまで快適にはいかないかも知れないが、旅をしながら寝泊まり生活出来るように毎日コツコツ準備を進めていた。
町や村で暮らすんじゃなくて、人から離れた場所で生活する方が、雪はきっと安心出来る、って思った。
俺も、雪と紫雪と一緒に静かに暮らしたいーー。
大変な事もいっぱいあるかも知れねぇが、きっと三人なら楽しい。
守護神に居た頃は、忙しくて遠出なんて任務以外で行けなかったし、あの頃は雪があんまり外に出たがらなかったからな。
そう!初旅行に、家族旅行に、新婚旅行!!
いっぺんに兼ねて、世界中の色んな場所へ一緒に行くんだ。
この命が尽きるその日までーー……。
いや。
そんな、終わりの日の事なんて考えない。
一日でも長く、少しでも遠くに、一つでも多くの場所に一緒に行って、一緒に生きてるんだ、って実感してほしい。
明日は何処に行こうか?
明日は何をしようか?
真っ直ぐ前を向いて、一緒に未来を見て生きていきたい。
そんな想いを込めて、俺はここ数日車の改造に全力を注いでいた。
そして、ついに完成したんだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
火駆闘戯 第一部
高谷 ゆうと
ファンタジー
焼暴士と呼ばれる男たちがいた。
それは、自らの身体ひとつで、人間を脅かす炎と闘う者たちの総称である。
人間と対立する種族、「ラヨル」の民は、その長であるマユルを筆頭に、度々人間たちに奇襲を仕掛けてきていた。「ノーラ」と呼ばれる、ラヨルたちの操る邪術で繰り出される炎は、水では消えず、これまでに数多の人間が犠牲になっていった。人々がノーラに対抗すべく生み出された「イョウラ」と名付けられた武術。それは、ノーラの炎を消すために必要な、人間の血液を流しながらでも、倒れることなく闘い続けられるように鍛え上げられた男たちが使う、ラヨルの民を倒すための唯一の方法であった。
焼暴士の見習い少年、タスクは、マユルが持つといわれている「イホミ・モトイニ」とよばれる何かを破壊すべく、日々の鍛錬をこなしていた。それを破壊すれば、ラヨルの民は、ノーラを使えなくなると言い伝えられているためだ。
タスクは、マユルと対峙するが、全く歯が立たず、命の危機にさらされることになる。己の無力さを痛感したその日、タスクの奇譚は、ゆっくりと幕を開けたのだった。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる