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第8章(4)雪side
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しおりを挟むオレと居たら、紫夕は普通の生活なんて出来ない。
オレを人型魔物だって知ってる人から逃げて……。例えオレを知らない人がいる地に辿り着いても、いつ魔物化するか分からないから、ずっと人目を避けて生きていかなきゃいけない。
オレには、紫夕を孤独にして、辛い想いをさせる事しか、出来ないーー……。
「みゃ~……」
「っ……」
でも、離れたくない。
紫夕と紫雪と、一緒に居たいーー……。
紫雪を抱き締めて、葛藤する思いに答えが出ないまま、また夜が明けていった。
……
…………。
翌朝ーー。
「ごちそうさん!
やっぱり、雪の飯は最高だなー!」
「そんな事ないよ。紫夕が昨日の夜作ってくれたうどん、美味しかった」
「へへっ、そっか?
あ、これ洗っちまうな!」
「あ、ありがとう。
なら、オレ洗濯物干してくるね」
「おう!こっち終わったら手伝うから、ゆっくりでいいぞ~」
「……。うん」
朝ご飯が終わって紫夕とそんな会話を交わすと、オレはリビングを後にして脱衣所に向かった。
洗濯機から洗濯物を取り出して、洗濯籠に移すと、家の外の物干し竿がある場所まで移動する。
平和な日常。
幸せな、生活。
それなのに、オレの胸はモヤモヤしたまま。
洗濯物を干しながら、紫夕の事を思い出す。
紫夕は、オレが眠っている間にまた一段と良い男になった。
簡単な物だけど、料理も出来るようになった。
まだまだ完璧には程遠いけど、家事も率先してやってくれるし、気遣いも出来る男に……。
普通なら……。
普通の彼女や奥さんなら、そんな風に変わってくれた男性を嬉しく思い、幸せに感じるんだろうな。
でも、オレにはこの紫夕の成長と優しさを素直に喜べない。
目にする度、実感する度、まるで神様に言われているんじゃないか?って思う。
お前はもう、紫夕に必要ない、ってーー……。
「ーーゆ~き!」
「!っ、わ……!」
ボーッとしていたところを背後から抱き締められて驚く。思わず手にしていた洗濯物を落としかけるが、それをオレを片手で抱いたままの紫夕が地に落ちる前にもう片手でキャッチした。
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