スノウ2

☆リサーナ☆

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第8章(3)紫夕side

8-3-1

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最悪だーー……。

風呂場で熱いシャワーを頭からぶっかけながら、俺はさっきの自分を反省した。

ゆきが帰って来てくれて嬉しかった。
ゆきが求めてくれて嬉しかった。
可愛いくて、愛おしくて……。俺だって、あのままゆきだけを感じて満たされたかった。

……けど。
みぞおちに刻まれた傷跡を見たら、サクヤアイツの事が思い浮かんだ。
だって、つい、昨日の朝まで……サクヤは居たんだ。この風呂だって、前の夜に一緒に入ったばっかりなんだ。
期間にしたら、俺とサクヤが過ごした時間は二週間もない。でも、簡単には忘れられない。

ゆきはサクヤで、サクヤはゆき
俺を救う為に俺と出逢ったサクヤの記憶が消えてしまっただけで、サクヤが死んだ訳じゃないーー。

そう、頭では分かってる。
ゆきを幸せにする事が、同時にサクヤを幸せにしている事にも繋がる。
だから、ゆきとこれからずっと一緒に……。命が尽きるまで生きていこう、ってもう一度決めたんだ。

それなのにーー……。

「たくさんやさしくしてくれて、ありがとう。
おうどん、ぶちぶちだったけど、ほんとうにおいしかったよ?
……もういっかい、たべたかったなぁ」

「こんどうまれかわったら、しゆーのおよめさんに……なりたいな」

あの可愛い声が、可愛い笑顔が、耳にも瞳にも、心にも焼き付いてる。

このまま俺だけ、幸せになっていいのかーー?

それに、サクヤだけじゃない。
ここに辿り着くまでに、俺のせいで傷付いたのは……、……。
そう思ったら、俺はゆきにあれ以上触れられなかった。

「……変に、思ったよな?」

ゆきは頭が良いから、俺に何も言わなかった。
風呂の準備が出来た事を伝えたら、ただ「ありがとう」って微笑って……。素直に入って、上がったら俺に「紫夕しゆうも入ってきたら?」って、また微笑ってくれた。
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