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第8章(1)雪side
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しおりを挟む「お前は現世に戻りなさい」
「!……え?」
その言葉にオレが驚くと、スノーフォールは更に驚かせる事を言う。
それは、なんと紫夕の事。
聞けばスノーフォールとその子供の命を奪ったのは、ずっと仮死状態になっていたオレを目覚めさせる為に必死だった紫夕が招いた惨事。
直接命を奪ったのは別の人物だが、全ては、紫夕がオレを救おうとした結末だった。
スノーフォールは言った。
「直接手を下さなかったにしても、やはり我が子を奪った憎しみは抑え切れなかった」と。
それは、当然だと思った。
でも、紫夕にそこまでさせてしまったのは自分なのだ、と強く思った。
悲しくて、申し訳なくて……。怒りの感情もあった。
けど、同時に嬉しくて……。
自分が紫夕にそこまで愛されていたのだと、思ったら、怒れなくて……、……。
色んな感情が入り混じって、気付いたら涙が溢れていた。
スノーフォールは続ける。
「だから、私は邪魔をしたのだ。
お前の記憶を凍結させ、"お前ではないお前"をあの男の前に差し出した。
人間であるあの男が、本気で、純粋にお前を愛しているなどと信じられなかったのだ。
……だが。見せてもらった、あの男とお前の絆の深さをな」
オレには、その言葉だけで何があったのかの全てを理解する事が出来なかったけど……。自分が出逢ってからずっと見てきた紫夕を思い出して、彼の優しさや心の暖かさがスノーフォールにも伝わったのだと、思った。
「戻って、我々の代わりに生きなさい。
……お前なら、それが出来る」
"お前になら、それが出来る"ーー。
「一族の未来を、お前に託す」
一族の未来を、オレにーー……?
聞きたい事、話したい事はたくさんあったが、おそらくスノーフォールがこの場に留まれる時間に限界がきたようだった。
身体は再び輝き、輪郭がボンヤリと歪みだしたスノーフォールがオレの胸に顔を擦り付けてくる。そして、オレがそっと抱き締めるようにすると……。
「ーー……頼んだぞ?」
そう囁いて、スノーフォールはスー……ッと、腕の中で消えていき、オレの左耳にいつの間にか着いていたピアスの宝石に取り込まれていった。
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