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第7章(3)紫夕side
7-3-2
しおりを挟むクレープ美味しかった、とか。恐竜のぬいぐるみを取ってもらえて嬉しかった、とか……。
一緒に飯を食って、お風呂に入って、寝て……。そんな、俺と過ごした些細な日常の一瞬一瞬が煌めいて、信じられない大きな力になったそうだ。
『オドロイタ……。ソレホドマデニ、オマエトアノコノキズナハ、フカカッタノダナ』
スノーフォールがそう言うと、ずっと握り締めていた俺の右拳がチカチカと光りだし、暖かい温もりを感じる。
ハッとして開くと、そこにあったのは四つ葉のクローバー。最期にサクヤの涙がかかった事で、龍の涙の結晶の中に閉じ込められている四つ葉のクローバーだ。
しゆーのゆめは、ぜったいにかなうよーー。
それを目にした瞬間。
俺の中にそう言ったサクヤの声が、もう一度響いた。……そして。
『……ミセテモラオウカ。
オマエヲシンジテ、ワガイチゾクノミライヲーー……』
我が一族の、未来ーー。
スノーフォールが言った、その言葉の意味を知るのは、すぐ直後。
俺の周りを冷たい風が吹き荒れたと思ったら、その風は右手に集まり、龍の涙の結晶に閉じ込められた四つ葉のクローバーを吹き上げる。
そして、浮き上がったそれが白銀の光を放ったら……。
「ーー……サクヤッ!!!!?」
その光の中に現れたのは、眠ったように眼を閉じたままのサクヤ。
光が止み、それと同時にストンッと宙から落ちて来たサクヤを、俺は咄嗟に受け止めるとギュッと強く抱き締めた。
……
…………あまりの突然の出来事に、もう夢か現実か分からなくなった。
色んな事がこの短い時間に起こり過ぎて、頭の中は真っ白だった。
けど、腕の中のサクヤの重み、温もり。
抱き留めた際にちょうどサクヤの胸元に当たった耳から、トクンッ、トクンッと言う音が聞こえてきて……。呆けていた俺を、呼び覚ます。
ーー……っ、生き……てる?
顔を覗き込んで、そっと頬に手を触れると、唇に当たった親指にサクヤの吐息がかかる。
っ、……息、して……る。
安堵と心労からフラつき、俺はサクヤを抱きかかえたまま地面にドサッと尻餅を着いた。
そして、もう一度……。もう絶対に離さないと決めて、その大切な存在を確かめるように強く強く抱き締めた。
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