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第7週(2)紫夕side
7-2-3
しおりを挟むみぞおちに入った一撃からのバキィッ!!と言う鈍い音は、おそらく骨が砕かれた音。
飛ばされた風磨は、激しい衝撃音と共に勢い良く木にぶつかり……。そのままガクリッ、と地面に落ちると動かなくなった。
……
…………シンッとした原っぱ。
ヒュゥ……ッと、風の音だけが嫌に大きく聞こえる。
「……っ、……。
…………。…………ッ」
声すら出せない状況だった。
サクヤは暫く風磨を見つめていたが、もう起き上がって来ない様子を確認すると俺にチラリと視線を移してくる。
そして、足音もたてないで、ゆっくりと俺に近付いてくると、目を細めて言った。
「……カワイソウダガ、オマエモオワリダ」
間近で瞳を合わせて、声や口調を聞いて、改めて確信する。
ーーああ。
コイツは、やっぱりあの時のスノーフォールだ。
……と。
でも、何故かな?
そう確信したら、何だか身体と心の強張りがなくなっていった。
それどころか、風磨に刺された筈のサクヤの腹の傷が、氷で固めて止血したのか止まっているのを見たら……。大丈夫なのだ、と安堵して、不思議と笑みが溢れる。
おかしいな。
今の状況は、まるで死神に命を狩られる瞬間に近いのに……。
「コノママ、ネムリニオチルガイイ……」
スノーフォールのその言葉も、俺を見つめてくる瞳も、少しも怖くなかった。
気付いたら、原っぱは降り注ぐ吹雪で真っ白になっていた。
気温が一気に下がって、すっかり体温を奪われていた俺の身体は冷え切っていたが……。これもスノーフォールの不思議な力なのか、苦しみや痛みはなくて、一瞬で感覚を失われる。
そう、まるで夢の世界に誘われるかのように強力な眠気に襲われ……。意識を手放した俺は、その場に倒れた。
……
…………。
スノーフォールの別名は「純白の妖精」。
そう呼ばれているのは、その美しい容姿は勿論だが、もう一つ理由があった。
白く美しい白鳥のような翼を持ちながらも、天使ではなく妖精と呼ばれるのは、しっかり意味がある。
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