スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
144 / 589
第7週(2)紫夕side

7-2-2

しおりを挟む

ダランッと宙に浮いているサクヤから風乱ふうらんを抜こうするが、風磨ふうまがどれだけ必死になろうとも……。サクヤの肩を片手で掴み、力尽くで引こうとしても、抜けない。

これは、一体ーー……?

俺がそう思った瞬間だった。
原っぱに降り注いでいた粉雪が次第に勢いを増して来たと思ったら、ピキピキピキッと言う音を響かせてサクヤから流れ出ていた血がみるみるうちに凍っていく。
草花に滴り落ちた血は勿論、サクヤを貫き濡れた風乱ふうらんも……。

「っ、く……!!」

そして、サクヤの血に濡れた風磨ふうまの右腕も凍り始めた時。

「カカッタナ、オロカモノメッ……!!!」

空気がビリッと震える咆哮のような声。
それは、生きていた、と言う安渡や嬉しさなどを一気に通り越してしまう程にゾクッと心を震わせるものだった。
俯いていた顔を上げたサクヤは身体を貫かれても尚、その瞳は真紅の光を灯したまま。
その、全く戦意を失っていない姿を目の当たりにして身の危険を感じたのだろう。風磨ふうまは今までにない程に必死になり、サクヤから離れようとする。が……。

「ノガス、モノカッ……!!!」

サクヤは右手で自らの背中から突き出ている風乱ふうらんの刃先を持ち、左手で風磨ふうまの右腕を掴むとグッと爪が喰い込む程に力を込めて放さない。
そして、サクヤが手で触れている部分が眩い白銀色に輝き出したと思ったら……。

「クダケチルガイイッ……!!!」

パッ、キィイイーー……ンッ!!!!!

まるでその言葉を合図にするように、サクヤの血で凍りついていた風乱ふうらんと、風磨ふうまの右腕が……砕け散った。

「っぐあぁあああああーーー……ッ!!!!!」

原っぱに響く、風磨ふうまの断絶魔に近い叫び声。
思わず耳を塞ぎ、目を逸らしたくなるが、目の前で起こった出来事が衝撃的過ぎて身体がピクリとも動かない。
しかし。そんなまばたきすらままならない俺の事などお構いなしに、サクヤは自らの目の前で痛みにもがく風磨ふうまを回し蹴りで思いっきり蹴り飛ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

愛おしいほど狂う愛

ゆうな
BL
ある二人が愛し合うお話。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...