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第7週(2)紫夕side
7-2-2
しおりを挟むダランッと宙に浮いているサクヤから風乱を抜こうするが、風磨がどれだけ必死になろうとも……。サクヤの肩を片手で掴み、力尽くで引こうとしても、抜けない。
これは、一体ーー……?
俺がそう思った瞬間だった。
原っぱに降り注いでいた粉雪が次第に勢いを増して来たと思ったら、ピキピキピキッと言う音を響かせてサクヤから流れ出ていた血がみるみるうちに凍っていく。
草花に滴り落ちた血は勿論、サクヤを貫き濡れた風乱も……。
「っ、く……!!」
そして、サクヤの血に濡れた風磨の右腕も凍り始めた時。
「カカッタナ、オロカモノメッ……!!!」
空気がビリッと震える咆哮のような声。
それは、生きていた、と言う安渡や嬉しさなどを一気に通り越してしまう程にゾクッと心を震わせるものだった。
俯いていた顔を上げたサクヤは身体を貫かれても尚、その瞳は真紅の光を灯したまま。
その、全く戦意を失っていない姿を目の当たりにして身の危険を感じたのだろう。風磨は今までにない程に必死になり、サクヤから離れようとする。が……。
「ノガス、モノカッ……!!!」
サクヤは右手で自らの背中から突き出ている風乱の刃先を持ち、左手で風磨の右腕を掴むとグッと爪が喰い込む程に力を込めて放さない。
そして、サクヤが手で触れている部分が眩い白銀色に輝き出したと思ったら……。
「クダケチルガイイッ……!!!」
パッ、キィイイーー……ンッ!!!!!
まるでその言葉を合図にするように、サクヤの血で凍りついていた風乱と、風磨の右腕が……砕け散った。
「っぐあぁあああああーーー……ッ!!!!!」
原っぱに響く、風磨の断絶魔に近い叫び声。
思わず耳を塞ぎ、目を逸らしたくなるが、目の前で起こった出来事が衝撃的過ぎて身体がピクリとも動かない。
しかし。そんな瞬きすらままならない俺の事などお構いなしに、サクヤは自らの目の前で痛みにもがく風磨を回し蹴りで思いっきり蹴り飛ばした。
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