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第7章(1)紫夕side
7-1-5
しおりを挟む目の前で大切な人の生命が消える辛さが、あの時雪を失ったと思った俺には痛い程分かるーー……。
残月、やっとお前の声が聞こえるようになったけど……さよならだ。
どうしてやったらいいのか、分からない。
今更何をしたところで、スノーフォールの親子の生命を救ってやる事は出来ない。
でも、俺は自分の全てで償おうと思った。
残月を地面に突き刺して、ゆっくりと柄から手を放すと、一歩前に出て深呼吸をする。
……ーーしかし。
覚悟を決めて、俺がこちらに注意を引こうとサクヤに声を掛けようとした瞬間だった。
「っ、このバケモノがッ!!調子に乗るんじゃねぇーーーッ!!!!!」
魔器を破壊された事に怒りを露わにした風磨が、風乱の形状を先の尖ったドリルのように変えると、サクヤの間合いに素早く入り込み……。
ーー……ドスッ!!!!!
その身体のみぞおちを、勢い良く貫いた。
……
…………。
「……、っ……は?」
俺には一瞬、その光景が理解出来なかった。
サクヤの身体を風乱の刃が刺し、その先端は貫通して背中から突き出ている。
……っ。
……、……嘘、だろ?
そして、サクヤの背中から突き出した風乱の刃先からは、ポタポタと真っ赤な血が滴り落ちて……原っぱの草花を染めた。
「っーー……サクヤァァァッ!!!!!」
この声がもうサクヤに届く事がなくても、俺にはその名を呼ばずにはいられなかった。
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