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第7章(1)紫夕side
7-1-1
しおりを挟む血が燃えたような真紅の瞳は、スノーフォールが怒り状態を表す変化ーー。
そして、サクヤの口から出た声。
それはいつものサクヤの可愛らしい響きでもなければ、静かで優しい雪の響きでもない。鼓膜を震わせ、頭に響く甲高い音のような声だった。
「っ、サク……ヤ?」
ゴクリッと唾を呑み、震えた声で名前を呼ぶが真紅の瞳が俺をチラッとも映す事はなかった。ただただ真っ直ぐに、その瞳は風磨を捉えて離さない。
それはまさに、獲物を狙う、魔物の眼ーー。
「これはこれは。予想外だな」
一方。
そんな鋭い視線に貫かれながらも、風磨は全く動じている様子はなかった。死神の釜のような風乱をクルクルと回しながら、ニヤリと笑ってサクヤを見つめている。そして……。
「まあいい。少々手荒になるが、やる事は変わらない。
……僕は絶対にお前を自分のモノにするッ!!」
風乱をグッと握り直すと、その場を駆け出しサクヤに向かってくる。
っ、マジかよ……!
俺は咄嗟にサクヤを護ろうと、向かってくる風磨を迎え討つべく斬月を構えた。
……しかし。
その直後に背中と肩に、一瞬トンッと響きを感じる。
なんとそれは、サクヤが俺の背中と肩を足場にした振動だった。サクヤはあっという間に俺を越え、風磨に向かって行く。
「?!っ、……サクヤーー!!」
必死にその背中に向かって名前を呼ぶ。が、顔だけでも振り返ってくれる事はおろか、何の反応も示してはくれない。
地に降りたサクヤは、そのままダッと地面を蹴ると風乱を振り下ろす風磨の間合いに跳び込んだ。
っ、嘘だろッ?!斬られーー……。
その状況を目の当たりにして、そう覚悟した瞬間だった。耳に届くのは肉や骨を斬り裂くものとは違う、キィイインッ……!!と言う金属音。
目を疑う。
そこには斬られて飛び散る肉片も鮮血もなく、風乱の刃はサクヤに当たる寸前で止まっていた。
そう、まるでサクヤの周りを、人の目には見えない透明な壁が覆っているかのように……。
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