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第6章(4)紫夕side
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しおりを挟む「っ、何でだよ……ッ。
何で、俺達が戦わなきゃなんねぇんだっ?!」
戦う事はもちろんだが、1番悲しいのは理由が分からない事だった。
幼い頃からの友達だと……。数少ない親友だと思っていたのに、何も言ってもらえない。それが、1番ショックだった。
すると風磨は少し俯いて、ボソッと呟く。
「……そういう所だよ」
「!……え?」
「"そういう所"が、嫌いだ……」
ーー……風磨?
風がサアァ……ッ、と吹いて、長い前髪が俯いていた風磨の顔を晒す。
その、傷付いた子供のような哀しそうな表情と瞳は、絶対に演技だと、俺には思えなかった。
やっぱり、何か理由があるーー。
風磨が俺と戦う事。
そして、サクヤに執着し、手に入れたいと望んでいる事には何か理由がある。
そう思えたら、ようやく俺にも"戦う理由"が出来た。
ぶん殴って、大人しくさせて、もう一度しっかり向き合うんだーー。
たくさんのものを護る事は出来ないと悟った時に、それなら、愛する人を1番に大切にしようと思った。
けど、それはやっぱり違う。
杏華達を遠ざけようとした時の後悔を、過ちを、もう繰り返してはいけない。
サンキュー、斬月ーー!!
俺が再び迷走しないように呼び掛けてくれた相棒。チカチカと優しい光を放ち、俺に力を貸してくれると言っていた。
風磨を殺したい訳じゃない。
そして、俺は斬月を人を殺す道具にしたい訳じゃない。
でも、俺は前に、未来に進みたいーー。
そう強く願った時、斬月が言った。
『信じて』……と。
俺には、その言葉の意味が何となく分かったような気がした。
ーーああ。信じるッ!!
握る手に力を込めて、脚に力を込めて、俺は思いっきり下から斬月を風磨に振るった。
キイィィィンーー……ッ!!!!!
風磨がそれを風乱で受け止める。
だが、今回は俺と斬月も負けちゃいない。一心同体、想いが一つになった俺達の力は風磨達に……。いや、自分達に打ち勝つ。
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