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第6章(3)紫夕side
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しおりを挟む少し前から……。守護神を辞めて再会してから、何となくおかしい親友の様子に気付いてはいた。
けど、認めたくなくて、目を逸らしていた。
ーー……でも、もう逸らせねぇっ!!
「サクヤを放せッ、風磨!!」
俺は風磨の背後を取ると、その背中に向かって斬月を突き付けた。
喉を絞められて持ち上げられているサクヤが、俺に気付いて足を動かしてバタバタと暴れる。だが、風磨はそんな衝撃にも、剣を突き付ける俺にも動じないで口を開いた。
「やぁ、久し振りだな。紫夕」
「っ、挨拶なんていい!!サクヤを放せッ!!」
とても人の首を絞めているとは思えない程に冷静な口調の風磨。顔だけ振り向いて俺の方を見ると、ニヤリと笑って言葉を続ける。
「放せ?まるでこの子が"お前のもの"のような口振りだな。
"龍の涙"を手に入れて、命を救ってやったのは誰だか忘れたのか?」
「!っ……」
その言葉に、一瞬グッと自分の言葉を飲み込みかける。が、酸欠で苦しそうなサクヤの様子に一刻を争うと思った俺は、突き付けていた斬月を下ろすと風磨に言った。
「っ、頼む、風磨……。サクヤを、降ろしてやってくれ」
すると、そんな俺を見てまたニヤッと笑みを浮かべた風磨はサクヤを空中から降ろした。でも、地に足を着けさせた直後に、咳き込むサクヤを今度は羽交締めにしながら口を開く。
「ちょうど良かった、紫夕。お前に紹介するよ」
「?……紹介?」
「ああ。少し前に約束しただろう?僕の大切な人を今度紹介する、って」
僕の大切な人ーー……?
この状況でいきなり何を?と、一瞬思いながらも、すぐに"まさか"と思った。
この状況だからこそ、風磨が自分の大切な人と紹介する人物なんて、たった一人しかいない……。
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