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第6章(1)サクヤside
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…………何だか、落ち着かない。不安な気分。
瞼をそっと開けると、目の前にあったのは一緒に眠っていた恐竜のぬいぐるみ。ひと目見て気に入った、白い飛龍のぬいぐるみだ。
いつもはこの子を抱いていると何だか嬉しくて安心したけど、今は落ち着かない。
辺りは暗い、まだ夜中だ。
目を擦りながら見渡すと、隣のベッドで紫夕が眠っているのを見付けた。
その姿を見付けた瞬間、笑顔が溢れ、心の中も覆っていた雲がなくなったかのように明るくなる。
しゆーと、いっしょがいいーー。
恐竜のぬいぐるみを持つと、自分のベッドから紫夕の眠るベッドへ移動。掛け布団の中に潜り込んで、顔だけ出すと紫夕に密着して寝顔を見つめた。
さっきまでの不安を一気に消してくれる、安心する体温と匂い。それに、この息遣いも何だか昔から知っているように感じる。
胸の奥がきゅーんってして、たった一枚纏っている寝巻きでさえ邪魔に思えてしまう程に、もっと近付きたくなるのだ。
なんだろう?この、きもちーー……。
紫夕の事が好き。
でも、好きとか、大好き、じゃ足りなくて、この感情はもっともっと……それを超えた"何か"な気がする。
身体の芯がムズムズするようなーー……。
「……ん、っ」
「わ、っ……」
考え事をしていたら、寝返りを打った紫夕が背中に腕を回してきてギュッて抱き締められた。
暖かい、まるで宝物を抱き締めるみたいに優しい腕の中。鼓動がトクンッと高鳴って、少し恥ずかしいけど嫌じゃない。むしろ、嬉しくて思わず笑みが溢れてしまう程だった。……けど、…………。
「ーー……雪、っ」
!っ、……え?
その名前を呼ばれた瞬間、胸がズキンッて痛くなった。
そして、思い出す。夕飯の時に言われた紫夕の言葉。
「ああ、そうだなぁ~。雪は、俺の大事な人だ!」
大事な、人ーー……。
その言葉が示す意味は、幼い心ながらにも分かってしまった。
……
…………。
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