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第6章(1)サクヤside
6-1-1
しおりを挟む少し前まで、ボクの将来の夢は"母さんを護ってあげる事"だった。
でも、そう言ったボクに母さんが言ったんだ。
「私の為じゃなくて、いつかサクヤが本当に好きになった人の為に、大切に生きなさい」……って。
ボクには、その意味が分からなかった。
「どうして?サクのだいすきは、かあさんだよ?
サクはつよいおとこになって、かあさんを"みづきさん"のかわりにしあわせにしてあげるの!」
一緒に夜空を見上げる時、母さんはいつも三日月を見て悲しそうにしていた。
そんな表情は見たくない。母さんには、いつも笑顔でいてほしかった。
だから、早く大人になって、強い男になって、三月さんの代わりになろうと思ってたんだ。
それがボクの将来の夢であり、生きている理由ーー。
……
…………でも、母さんはいなくなった。
三月さんの所に、行っちゃったのかなーー?
寂しいけど、それなら……。
そうだったら、いいな、って思った。
母さんが笑顔で、幸せなら、ボクは大丈夫だよ。
元気でいるよ。泣いたりしない。
心配かけないように、良い子で居る。
ーー……けど。
そんな時に、出逢ったんだ。
「サクヤ、その傷は"男の勲章"だ!」
「「怪我するくらい、頑張った証」なんだ!」
お医者さんや研究の人達に「気持ち悪い」って怖がられてるボクに、そう言ってくれた。
「こんなにお利口で、頑張り屋で優しい子、なかなかいないぞ?」
ボクに躊躇いなく触れてくれて、抱き締めてくれた。
「俺はお前が大好きだ。絶対に絶対、お前を嫌いになったりしない」
大好きだ、って言ってくれた。
母さんみたいな、暖かい気持ちをボクにくれた。
でもね。
少し違うんだ。母さんに感じる"暖かい"とは、似てるけど違って……。胸の奥がきゅーんってなるの。
母さんの言ってた言葉の意味、分かったよ。
「サクのしょうらいのゆめはね!しゆーのおよめさんになるの!」
ボクは紫夕と生きたいんだーー。
……
…………。
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