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第5章(3)紫夕side
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***
全く、子供とは残酷な生き物だーー。
その事件はもうすぐ検診が終わるだろうと思い気を遣った俺がお茶を淹れて、台所からサクヤと朝日の居る部屋に戻った時の事だった。
「サクのしょうらいのゆめはねー……」
「ーー……へぇ。素敵な夢だね」
「うんっ!!」
サクヤが朝日の耳元で何かを言っていて、その後に見せたのは照れたようなめちゃくちゃ可愛い笑顔。
なんと、二人が内緒話をしていたのだ。
一瞬、サクヤの可愛い笑顔の方に興味を持っていかされるが……。俺はすぐにハッとして、二人の間に割り込む。
「なんだなんだ、サクヤの将来の夢の話か?俺にも聞かせてくれよ~?」
朝日とのやり取りに内心は嫉妬しながらも、俺は「いかんいかん、大人気ないな」と気持ちを抑えてサクヤに寄り添うようにして尋ねた。
朝日に話していた事を、俺に教えてくれないなんて絶対にないーー。
そう自信があった俺は、てっきりすんなりと「いいよ~」って教えてもらえるもんだと思ってた。それなのに……。
「だめ!」
「!っ、へ?」
「あさひせんせーとのヒミツなの!しゆーにはナイショ~!」
そう言って「えへへ」と微笑ったサクヤは恐竜のぬいぐるみを抱き締めて、紫雪の方へ走って行ってしまった。
可愛い笑顔で黙らせて、何という無垢な奴だ。
「……」
「……。あ、お茶、頂きます」
その場に残された、俺と朝日の二人。
暫しの沈黙の後、気遣うように声を掛けてお茶をすする朝日に俺は問う。
「……どんな手を使った?」
「はい?」
「サクヤにどんな手を使って手懐けてんだ?」
「て、手懐ける、って……。特に何も」
「嘘つけ!!何もしてねぇのにサクヤがあんなにお前に懐く訳ないだろ~っ?!」
本気で怒っている訳ではない。悔しいのだ。
そう、醜いただの嫉妬だ。
全く、子供とは残酷な生き物だーー。
その事件はもうすぐ検診が終わるだろうと思い気を遣った俺がお茶を淹れて、台所からサクヤと朝日の居る部屋に戻った時の事だった。
「サクのしょうらいのゆめはねー……」
「ーー……へぇ。素敵な夢だね」
「うんっ!!」
サクヤが朝日の耳元で何かを言っていて、その後に見せたのは照れたようなめちゃくちゃ可愛い笑顔。
なんと、二人が内緒話をしていたのだ。
一瞬、サクヤの可愛い笑顔の方に興味を持っていかされるが……。俺はすぐにハッとして、二人の間に割り込む。
「なんだなんだ、サクヤの将来の夢の話か?俺にも聞かせてくれよ~?」
朝日とのやり取りに内心は嫉妬しながらも、俺は「いかんいかん、大人気ないな」と気持ちを抑えてサクヤに寄り添うようにして尋ねた。
朝日に話していた事を、俺に教えてくれないなんて絶対にないーー。
そう自信があった俺は、てっきりすんなりと「いいよ~」って教えてもらえるもんだと思ってた。それなのに……。
「だめ!」
「!っ、へ?」
「あさひせんせーとのヒミツなの!しゆーにはナイショ~!」
そう言って「えへへ」と微笑ったサクヤは恐竜のぬいぐるみを抱き締めて、紫雪の方へ走って行ってしまった。
可愛い笑顔で黙らせて、何という無垢な奴だ。
「……」
「……。あ、お茶、頂きます」
その場に残された、俺と朝日の二人。
暫しの沈黙の後、気遣うように声を掛けてお茶をすする朝日に俺は問う。
「……どんな手を使った?」
「はい?」
「サクヤにどんな手を使って手懐けてんだ?」
「て、手懐ける、って……。特に何も」
「嘘つけ!!何もしてねぇのにサクヤがあんなにお前に懐く訳ないだろ~っ?!」
本気で怒っている訳ではない。悔しいのだ。
そう、醜いただの嫉妬だ。
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