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第5章(2)紫夕side
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しおりを挟む暫く抱き締めてやっていると、ようやく大泣きから「ひっくひっく」と言うグズリに変わって来た。
そのタイミングで俺はもう一度説得を試みる。
「サクヤ~。車もな、今日はいっぱい走って疲れてんだ。だから、もう休ませてやろう?な?」
「っ、……くるまも、ねてるの?」
「そうだ。サクヤだって、ずーっと走ってるのは疲れるだろ?」
「……っ、うん」
「だろ?車さんはな、更に俺とサクヤと荷物乗せて走ってくれたんだ。
「お疲れ様、ありがとう」って、今日はもう寝かせてやらねぇと」
「っ……、……」
「車はまた今度買い物行く時に乗せてやるから!なっ?約束!」
「っ……。わかっ、た……ッ」
子指と子指を絡めて指切りげんまんをして、説得は見事に成功。
サクヤはようやく俺の顔を見て、鼻をすすりながらコックリと頷いてくれた。
「お~し!えらいぞ、サクヤ。
ほら、せっかくの可愛い顔が台無しだ。鼻チーンするぞ」
俺は頭を撫でてやった後にティッシュでサクヤの涙と鼻水を拭いてやり、そのまま食卓へと連れて行く。
椅子に座らせて、今日の夕飯であるカレーを皿に盛り付けてサクヤの目の前に置いてやった。
作った、って言っても白飯炊いて、湯煎したレトルトカレーぶっかけただけだが……昨日の缶詰よりはずいぶんマシであろう。一応、切り方はガタガタだがレタスとキュウリとトマトの上に缶詰のコーンを乗せたサラダ付きだ。
こんなメニューでエプロンする必要なんてあったのか?ってツッコミはナシだ!大事なのは形から入る事だからな。
俺も隣に座るとサクヤ用の甘口カレーを冷ます為に「ふーふー」してやる。
「カレーはまだ熱いから先にサラダ食え」
「サク、トマトすき」
「お、そりゃ良かった。ドレッシングかけるか?ゴマか和風どっちが……」
「サク、しおがいい」
(↑深い意味はなくドレッシングで食べた事がないだけ)
「塩っ?!お前なんか通な食い方すんな」
なんて、驚かされる事もあるが……。
車やクレープやぬいぐるみで喜んだり、駄々捏ねて大泣きしたり、そんな喜怒哀楽が豊かな姿を見ていると、他の子供となんの変わりはないのだと思った。
魔物の血が入っていても変わらないーー。
……そう、思ってたんだけどな。
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