スノウ2

☆リサーナ☆

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第4章(3)紫夕side

4-3-5

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ゆき、よく俺を好きになってくれたな……。

苦笑いしながら心底そう思った。
杏華きょうかや他の女性とデートする時はいつもそれなりの服装にして身綺麗にしていたが、ゆきとは一緒に暮らしていたから全く飾らないままだったのだ。
おまけに、手の届く場所に何でも置いときたいタイプで片付けは嫌いな上に部屋は汚い。洗い物や洗濯物は困るくらい溜まらないとやらない。(一緒に暮らし始めてからはゆきが毎日のようにやってくれた)
食事は買って来た物か、カップ麺、レトルト、缶詰が当たり前……。(これも一緒に暮らし始めてからはゆきがほぼ毎日作ってくれた)

俺、最悪じゃないか……?

朝日あさひと言う自分とは全く違う紳士的な男性を目の前にして、俺はようやく気付いた。

もしもこのまま記憶が戻らずサクヤのままだったら、俺はそのうちフラれるのではないか?とーー……。

「?……望月もちづきさん?どうかしましたか?」

「!っ、あ、いや……サ、サクヤなら中に」

「ありがとうございます。失礼します」

勝手に一人で色々考えて、ガーンとショックを受けていたが、朝日あさひの声にハッとした俺は玄関の扉を開けて中に通した。
すると、更に俺の心にダメージが追撃される事件が起こる。

「おはよう、"サク君"」

!!っ、「サク君」だとッ……?!

「あ!あさひせんせー!」

っーー!!抱きついたッ……?!

朝日あさひがまさかのサクヤの事を「サク君」呼び。
そして声を掛けられたサクヤは手に持っていた猫じゃらしを捨てると、朝日あさひの元に駆け寄って来て……抱きついた!しかも、笑顔で……、……。

これにはもう、ショックなんて簡単な言葉では片付けられない位に、俺は頭や心をボコボコに殴られた程に凹んだ。

「おや、サク君。今日は随分と可愛い恰好をしてるね」

「うん!ネコさん!しゆーがきせてくれたの!」

「そうか、優しくしてもらってるんだね?」

「うん!しゆーやさしい!」

そんな二人の会話も、もはや俺には聞こえない。
ただ、サクヤが笑顔で朝日あさひに頭を撫でられている姿を呆然と見ているだけだった。
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