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第4章(2)紫夕side
4-2-3
しおりを挟むサクラさんはもうこの世にはいない。
しかも、討伐した際は知らなかったとは言え、魔物化してしまったサクラさんを斬ったのは自分だからだ。
俺が、この手でサクラさんをーー……。
つい、サクヤを抱いている手に力が込もる。
すると、俺の顔を見たサクヤがハッとしたと思ったら、すぐにニコッと微笑って言った。
「サクね!はやくおおきくなれるように、かみさまにおねがいしてたんだ!」
「っ?……早く、大きくなれるように?」
「うんっ!そんでね、かあさんをまもってあげるの!だから、だから……きっと、きゅうにからだがおっきくなったんだよね?」
「サクヤ……」
「でも、もしかしたら……。そのせいで、かあさんボクのこと、わからなくなっちゃったのかな?」
「っ……」
急に身体の話をするから、始めは返答に困っている俺を困らせないようにしてくれたのかと、思った。
でも、違う。最後に少し潤んだ瞳で、寂しそうに微笑みながらそう言うサクヤを見て、俺は気付いてしまった。
サクヤはきっと何となく、身体が大きくなってしまったのではなく、自分の知らないうちに時が経っていて……。サクラさんがもう、この世には居ない事に気付き始めてる。
けど、信じたくなくて、認めたくなくて……。知らない、気付かないフリをしているのだ、と。
そんなコイツに、何を言って、どうしてやったら1番良いーー?
心の問い掛けと同時に、俺の身体は勝手に動いていた。
俺はサクヤをギュッと抱き締めると、片手を後頭部に添えて優しく頭を撫でてやりながら言う。
「っ……そっか。えらいな、サクヤは」
「!……えらい?」
「ああ。お袋さん想いの、優しい子だ」
この言葉と行動が正しいのかは分からなかった。
でも、現実に気付きながらも必死に涙を堪えているサクヤに、俺は合わせてやる事しか出来なかったんだ。
心に寄り添って、傍に居てやって。そうやって、ゆっくりコイツが前に進めたらいいと思った。
すると、そんな俺に、サクヤが呟くように言った。
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