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第3章(4)紫夕side
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しおりを挟む「僕、今から仕事で出掛けるんスよ。そしたら暫くは帰って来られないんで、挨拶に来ました。
だってホラ、紫夕さん僕が帰って来る頃には、もうここには居ないかも知れないでしょう?」
その口調や言葉から、響夜は察しているようだった。
俺が橘側には来られない事に気付いた事。そして、ここを去る事を考えている事をーー……。
「あと、報告です。
杏華さん、本部に戻って無事に一命を取り留めたそうッスよ」
「……」
「それから、雪の手術も無事に終わりました。
今のところ大きな拒絶反応もなくて、早ければあと数時間で目覚める可能性もあるそうですよ」
「……」
「……、……会いに行かないんスか?」
最後の質問だけ、それまで弾むようだった響夜の声が少しだけ静かに聞こえた。
必要な物が全て集まって、俺達がここに戻って来てからすぐに雪の治療は始まった。昼過ぎからついさっきまで、十二時間以上の大掛かりな手術。
手術中はダメだと外されて返された指輪をもう一度はめてやって、「よく頑張ったな」って言いに言ってやりたいのに、身体が動かない。
言葉を交わすつもりなんてなかった。
けど、響夜の質問の仕方があまりに優しかったから、俺は気付いたら口を開いていた。
「……いっぱい間違えちまったからな」
「間違えた?」
「雪の為だ、って、俺はアイツのせいにしてこの数ヶ月生きてきたんだ。
それなのに、答え合わせしてみたら散々で……。俺は雪が喜ぶような事、何一つ出来てなくて……」
守護神を辞めて本部を出たが、俺があの時勇気を出して相談していたら、杏華達と居られる今があったかも知れない。
そしたら、杏華が傷付く事も、海斗が怒りに震えた涙を流す事もなくて……。雪が目覚めた時、みんなで一緒に笑えていたかも知れないんだ。
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