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第3章(3)紫夕side
3-3-6
しおりを挟むーー……けど。
「ーー……っ」
あったけぇなーー……。
左手に感じる暖かい温もり。
小さな鳴き声を上げながら、無駄な抵抗なのに暴れる動きが伝わって来て……。こんなに小さくても生きているんだ、って感じてしまった。
母親のスノーフォールに視線を向けると、その瞳は怒りに満ちた真っ赤ではなく水色で……。そこに在ったのは、我が子を想う愛でしかなかった。
その想いに触れて、空っぽだった心が僅かに暖まる。
……雪。
ごめん、俺はーー……。
「……、…………出来ねぇ」
右手から斬月を放し、左手からスノーフォールの赤ん坊を解放して、俺は言った。
そう言えて、自分で決断出来た瞬間。
ようやく自分に戻れた気がしたのは、気のせいだろうかーー……?
「ならお前はそこで見ていろ。
雪君はーー……僕が救うッ!!!」
……
…………けれど。
親友を止める事が出来ず、結局スノーフォールの親子を見殺しにした俺は同罪だ。
死神の釜によって引き裂かれる肉片。飛び散る鮮血。真っ白な身体が鮮やかな赤に染まって、水色の瞳から透明な雫が輝いて……。命が、消えて行った。
……
…………。
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