スノウ2

☆リサーナ☆

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第3章(3)紫夕side

3-3-3

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ガシャンッ!!と地面に持っていた瞬海しゅんかいを落とした海斗かいとが、他には目もくれず横たわる杏華きょうかに駆けて行った。

俺は、一歩も動けないーー。

風磨ふうまの居る場所を境に、向こう側には行けない。

これがこの数ヶ月、自分が行ってきた行動が生んだ結果だった。
俺はもう、"こっち側"の人間だからーー……。

「っ……な、んで……杏華きょうかさんが?」

海斗かいとの身体がどんどん震えていき、杏華きょうかの傍で力無く両膝を着いて座り込む。

「っ、何で……なん、でッ…………。
っーー……何でだよぉーーーーーッ!!!」

悲しみの中に怒りが入り混じった叫び声が、辺り一面に響き渡った。
俺にはその姿を見ている事しか、出来ない。以前のように、震えているその肩に触れてやる事は、もう出来ない。

「……、……。誰が、やった」

地面に拳を叩き付けた海斗かいとが、ボソッと呟いて……。フラつきながらも、ゆっくり立ち上がった。
そして、さっき地面に落とした瞬海しゅんかいの元へゆっくり歩いて行き、拾い上げると顔を上げた。その涙で濡れた瞳は、怒りを通り越して光のない、憎しみが溢れたもの。

「……許さない」

海斗かいとが構えて、瞬海しゅんかいの銃口がこちらに向けられる。

「っ……許さないッ、お前らみんなーー……」
「ーーやめろ海斗かいとッ!!!」

止めに入ったアントニーの手によって、下に向いた銃口から放たれた光の弾はドカンッ!!と大きな爆発音を立てて地面に撃ち込まれた。
暴れる海斗かいと。それを押さえ付け止めようとするアントニー。二人が目の前で激しく揉み合う。

「っ、放せッ!!放せよぉッ……!!」
「バカヤローッ!!落ち着けッ!!!」

アントニーはパァンッ!!と思いっきり平手打ちを喰らわせると、海斗かいとの両肩をグッと強く掴み言い聞かせるように叫ぶ。
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