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第3章(2)紫夕side
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しおりを挟む俺も斬月を背中の鞘から抜くと、自らの力を注ぐように両手で柄を握り締めたまま様子を伺う。
俺達が動く合図が来る、その瞬間までーー……。
空中を旋回するスノーフォールに向かって主に攻撃を仕掛けるのは、弓の魔器ー連華ーの使い手である杏華。
普通の弓ならば絶対に空中に居るスノーフォールにその矢は届かないが、杏華と連華の放つ光の矢の射程は長い。更に、敵に向かって行くスピードはまさに光速で、おまけに命中率はすげぇなんてもんじゃない。
杏華は兄の風磨と一緒で文武両道。特に弓道の腕がピカイチで、的の中心である正鵠を射る事なんて百発百中。
敵を狙って放つまでの時間もまさに一瞬で、射られる相手は連続で休む間も無く杏華の攻撃に追われる事となる。
だが、対するスノーフォールもさすがだ。
飛ぶ速さや身を翻す動きに緩急をつけて、紙一重で杏華の攻撃を交わし続けている。まさに、息を呑む攻防。
「杏華さんすごいッスけど、スノーフォールの方が一枚上手ですかね?せっかくの連続攻撃も、当たらなきゃ意味がない」
「……いや。杏華と連華の力はこんなモンじゃねぇ」
俺の言葉に響夜が「へ?」と首を傾げた直後の事だった。
それは完全に杏華の矢の軌道を読んだようだったスノーフォールが有利に見え、再び交わそうとした瞬間。その寸前で光の矢が分裂して、スノーフォールの身体を掠めた。
さすがのスノーフォールも自分の間近に来た矢が突然分かれ、一気に数本の軌道を読む事なんて事は不可能。「ギャウッ」と短い鳴き声を上げてバランスを崩し、一瞬高度がガクンッと下がる。
そこで次なる攻撃を仕掛けるのがアントニーと茶々だ。
アントニーの魔器、ハンマーのトニー・ブレイクが下から上へ大きく振り上げられたと思ったら、タイミングを合わせた茶々がその先に飛び乗りジャンプ力を増加。空中のスノーフォール目掛けて茶々はひとっ飛びすると、そのままスピードの乗った拳に、更に特殊なグローブの魔器ー拳々ーで攻撃力を上げて強力なパンチをお見舞いする。
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