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第3章(1)紫夕side
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しおりを挟む思い残す事はもうねぇ。
これで俺も、自分のすべき事に全力で挑めるーー。
俺が心の中でそう呟いた直後。ヒュゥ……ッと、冷たい風が辺りを吹き抜けて、平原の辺りにチラチラと粉雪が舞い始める。
それは、"ヤツ"が姿を現す時に起きる現象だ。
ギシャアアアァァァーーー……ッ!!!!!
平原全体の気温が一気に下がり、風が吹き荒れる中。粉雪で所々遮られる視界に、何処からともなく現れた純白の飛龍が大きな鳴き声を上げた。
「へぇ、"雪の妖精"の異名は伊達じゃないッスね。飛んでるのに羽音も、現れる時の気配もほとんどしなかった」
まるで粉雪の中に突然現れたかのような……。いや、粉雪から生まれたと言っても過言ではない程のその美しい登場姿に、響夜はゴクッと息を呑んだ後にニヤリッと笑っていた。俺も、初めて見た時に思ったさ。
雪に似てるーー……。
俺がおそらくなかなかスノーフォールを狩れないでいた理由の中には、きっとそんな感情が少なからずあったからだ。
俺が雪に感じる美しさと、スノーフォールの持つ美しさは鳥肌が立つ程似ている。雪は紛れもなくこの血を受け継いでいるのだと、痛感する程に……。
そして。それは同時に、橘が言っている事が嘘ではない事を俺に教えてくれた。
雪を目覚めさせる際に必要だと言われた、スノーフォールの部位集め。本当にそんな物を使って治療出来るのか半信半疑だったが、スノーフォールを見た瞬間に希望の光が見えた気がした。
あれから、数ヶ月。
その希望の光を今度こそ雪の命に変えるーー。
「ーー……さぁ、戦闘開始だ」
上空のスノーフォールを見つめながら魔器を構える杏華達の姿を見て、俺も背中の斬月の柄に手を掛けた。
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