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第3章(1)紫夕side
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しおりを挟む出会った当初は猫被ってたのか大人しくて可愛い感じだったものの、月日が経つにつれて杏華は普段からズカズカ物申してくるし、色んな事を手厳しく指摘された事も多々あった。
けど、アイツはしっかり触れて良い部分とダメな部分を分かってて……。本当に大事な事には自分から踏み込んできたりはしない。
俺が雪への気持ちに気付いて、関係を終わらせたい、って言った時も……。そして、俺が守護神を去る時もそうだった。
無理矢理辞表を出して、まるで夜逃げ同然のように倒れた雪を連れて俺が本部から出て行こうとした時。杏華に出会して……。絶対に引き止められると思ったら、アイツは車のカギを渡しながら一言だけ言ったんだ。
「お疲れ様でした、隊長」……って。
その一言が、俺を守護神の隊長からただの1人の男に、戻してくれたんだ。
「……。
出来れば、あの日を最後にしたかったな」
「へ?」
「いや、何でもねぇ」
小さく、ポツリと本音が漏れた。
出来れば、杏華と顔を合わせるのはあの日が最後のままが望ましかった。良い感じの思い出で終わって、お互い月日と共に徐々に忘れ去っていけたら良かった。
けど。
運命の神様がそれを赦してくれないのなら、お互い"今の1番"の為に生きるしかねぇーー。
そう思って、俺は閉じた瞼と共に、思い出を封じた。
そして目を開けて辺りを見渡すと、先程から見当たらない風磨の姿を探す。
「響夜、風磨は何処に行った?」
「ああ、風磨さんなら何か作戦に使えそうな物に心当たりがある、って、その辺探索しに行ったッスよ。
……あ、通信機に連絡来ました。「もし動きがあったら作戦を始めてくれ。後から合流する」だ、そうです」
後から合流ーー。
少々不安な気もするが、すんなりと事を進める為には風磨が戻る前に杏華達に動きがあった場合、こちらも作戦を開始するしかないと思った。
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