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第3章(1)紫夕side
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しおりを挟む何でこんな時に、って思うくらいに、最悪なタイミングで夢に見ちまうもんなんだよな。
過去の思い出、ってやつはーー……。
今でも覚えてるよ。
これは、四年前。16歳の海斗と初めて会った時の思い出だ。
この頃、もうすでに特殊部隊の第1隊長だった俺は、他の部隊の隊長達と新しく入ってくる隊員を見る為に最終試験の様子をモニター越しに観ていた。
守護神の隊員になるにはまずは候補生になって、15歳になる歳に模擬試験を受ける。そこで優秀な成績を残したり、試験官の目に止まった奴は次の段階である魔器の適合試験に進める。
が、大体はこの適合試験で消えていくんだ。
魔器は守護神に居る最高位の研究者達が造り出した、魔物の力と魂を宿した強力な兵器だ。
並の人間には従わせて扱うのは到底無理で、鍛え上げた肉体と、何より魔器に支配されない強い精神力を必要とされる。
模擬試験を通過した五人に一人適合すれば良い方で、ある年はこの適合試験で全滅だった年もあった。
そんな中で、海斗は事前の段階で「絶対に落ちるだろう」って噂されてた奴の一人だった。
模擬試験をギリギリの順位で合格。極度の上がり症で、ビビリで……。震えて、涙浮かべながら適合試験で魔器握ってた。
魔器を扱う上で最も大事な相性率もギリギリで、最終試験の訓練場での魔物相手の実戦でも、海斗は結局逃げて隠れて上手く乗り切ってた。
……でも、俺はそこが気に入った。
だから、海斗に声を掛けたんだ。
上がり症でビビリなのは悪い事じゃない。それはそんだけ、命の大切さを知ってる証だ。
魔器が海斗を選んだのはマグレじゃない。物心つく前に亡くなった元隊員の親父さんの気持ちを知りたい、って海斗の想いに魔器が応えたからだ。
逃げて隠れるのが上手いのは才能だ。海斗は気配を消して狙撃出来る、天性のライトボウガンを扱う素質を持ってる。
焦らなくていい。
ゆっくり、ゆっくり……強くなれ。
……
…………。
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