スノウ２

第２章（２）紫夕side

2-2-5

風磨ふうまはハッキリ言ってモテる。長身に程よい筋肉の体格に、綺麗な大人のイケメン顔。おまけに家柄も良くて、研究員だった父親の後は継がなかったものの頭も良くて、俺と同じ隊長職だった程に強く、優秀な魔器マギの使い手。
つまり、容姿端麗、金持ち、文武両道と言う、女性が恋人や夫にしたい男の条件をほとんどを持っていると言ってもいい。
けれど、これまで特定の女性と付き合ったり、ましてや風磨ふうまから「大切な人」と言う言葉を聞く事はなかった。それなのに……。

「相手の父親にも快こころよい返事がもらえてね。もうすぐ、一緒に暮らすんだ」

「！……まさか、それが理由で守護神ガーディアンも辞めたのか？」

「ああ。ちょっと訳アリな子だから、守護神ガーディアンにも実家にも居づらくなったんだ」

そう答えた後に「ま、実家には杏華きょうかがよく帰ってくれるから心配ないだろう」って言う風磨ふうまは、とても優しい瞳をしていた。それは、誰が見ても恋してる瞳。

「……すげぇな」

「ん？」

「わりっ、何かさ、風磨ふうまは本気で恋愛しないと勝手に思ってたんだ。……だから、驚いた、つーか。その相手がすげぇ、つーか」

長年の付き合いの親友からガチ恋の話を突然聞いた俺は、何だか自分の事のように恥ずかしくなった。すると、弾んだ声で言葉を返される。

「それはお互い様だろう？僕だって紫夕しゆうがここまで愛に熱いとは思わなかったよ」

「っ、ははっ……そっか、お互い様だな」

俺は気付いたら、ほんの少しだが久々に声を出して笑っていた。雪ゆきと紫雪しせつ以外の前で、本当に久し振りに……。

……少しだけ。
今は風磨ふうまとの再会を喜んでもいいよな？

今の人生みちを歩んでいる事を後悔した事は一度もないが、やはりこうして親友である風磨ふうまと話せるのは嬉しかった。

「どんな子か気になるな。風磨ふうまを本気にさせた相手」

「勿論紹介するよ。紫夕しゆうには、絶対ね」

「そりゃ楽しみだ」

それがまさに"束の間の休息"とも知らずに……。そんな会話をしながら、俺達は山岳地帯のふもとまで辿り着いた。

……
…………。