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第1章(5)紫夕side
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しおりを挟む「……は?」
「録音させてもらってるわよ?ぜ~んぶ。
だから、訴えたければどうぞ?貴方も自分の立場を失う覚悟があるなら、ね?」
表情を強張らせる男に、マリィが今現在も動いている小型の携帯用録音機を見せると……。男は更に表情を変えて、ダラダラと汗を流し始める。
そんな男を見てマリィはフフッと笑って、でもすぐにキッと睨み付けてトドメの一言を言い放つ。
「今日貴方達がしようとした事は見なかった事にしてあげるわ。
その代わり、貴方達も今日の事は他言にしないで、今すぐこの場から立ち去りなさいッ!!」
そのマリィの姿を、俺は、本当に心の底からカッコ良いと思った。それに比べて、俺は何なんだ?と、悔しくなる程に……。
男も、マリィの方が何倍も上手だと言う事が分かったのだろう。悔しそうな表情をして、「チッ」と舌打ちをしたが、逃げるようにバタバタと病室から出て行った。
静まり返る病室。
俺が突っ立ったまま見つめていると、視線に気付いたマリィが微笑む。
「ああ、録音機?ハッタリよ、ハッタリ。確かに途中から録音してたけど、さすがに前半はいきなりの事態に対処出来てなかったから証拠には使えないわね。
アイツが確認させろ~って言わなくてよかったぁ~……、って!紫夕ちゃんっ?!」
マリィが俺を見て、驚いた声を上げる。
気が抜けたのと、頭に血が昇り過ぎて何にも出来なかった自分に嫌気がさした俺が、床に尻餅を着いて頭を抱えたからだ。
「っ、俺……カッコ悪いな」
雪を護ってやりたかったーー。
でも、俺がしようとした行動は全部全部マイナスな事ばかりで……。マリィが居なかったら、全部全部失って、何一つ護る事なんて出来なかった。
俯いたまま、顔を上げられない俺。
けど、そんな俺に、マリィが傍に来て両膝を着いて言った。
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