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第1章(3)紫夕side
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しおりを挟む「っ、……ど、どうした?」
「……っ」
「ん?……どうした?雪?」
雪のまさかの行動に困惑と嬉しさが湧き上がるが、俺は必死に抑える。言い辛そうに、でも、何かを伝えようと小さく唇を動かそうとしている雪の様子に、俺は目線を合わせるように屈んで耳を傾けた。
でも、震える唇からはなかなか言葉が出て来なくて……。そうこうしてる内に、確認の為に病室を訪れた看護師に俺はまた怒られる。
「もう!また貴方ですかっ?
面会時間は守って下さい、って毎回毎回……」
「あ~~~、うるせぇなぁ!分かってる、ってんだろっ?」
俺と看護師がそんなやり取りを始めてしまうと、服の裾を掴んでいた雪の手は離れて……。視線も、俯いてしまっていた。
俺は様子がおかしい雪が気になりながらも、今後出入りが禁止にされる事だけは避けたくて、もう一度声をかけて帰る事にした。
「雪、絶対明日も来るから。なっ?」
また、明日ーー。
その時間が雪にとって、どれだけ長くて、辛くて苦しかったなんて知らずに……。俺は一度、病室を後にしてしまったんだ。
……
…………。
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