スノウ2

☆リサーナ☆

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第1章(2)紫夕side

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「……ひとまず、ベッドに戻ろうぜ?身体冷やすと風邪ひくからさ」

無反応なゆきを抱き上げて俺はベッドまで運ぶと、そっと降ろして寝かせてやろうとした。
でも、俺が良かれと思ってしたこの行動はゆきにとっては違って……。ベッドに降ろしたゆきを俺が見ると、カタカタと小刻みに小さな身体が震えていた。

「っ?……ゆき、寒いのか?」

「っ……!」

顔を覗き込もうとすると、今までにない位にビクッと反応したゆきが目を見開いて俺を見てくる。さっきまでとは違う揺れた瞳に、震えが止まっていない身体。
明らかにゆきは、俺を見て怯えていた。

「ーー……あ、っ……ご、ごめんっ!」

それが何故なのか一瞬で悟った俺は、ゆきから手を放してすぐに離れた。

「ち、違うからなっ?俺はお前を抱こうなんて思ってない……っ」

俺は何とか誤解を解こうと慌てて弁解する。
密室、ベッド、更にベッドに連れて行く俺と言う男……。ゆきは完全に、また酷い事をされると思ってるんだ。
ベッドの上で身体を震わせるゆきを見て、普通の人からしたら疲れた身体を休める場所である筈のベッドが、何よりも嫌で怖い場所何だと言う事が分かった。

っ、だから……あんな部屋の片隅で…………。

ゆきちゃんは色んな意味で普通の子供よりも、何倍も何十倍も難しい子。ただ可哀想だから引き取りたい、なんて生半可な気持ちじゃ……。ハッキリ言って、今の紫夕しゆうちゃんにはアタシは無理だと思うわ」

マリィが俺に言った言葉の意味を痛感する。
俺にとっての普通は、ゆきにとっては違って……。ゆきにとっての普通が、俺には違う。
世間一般的に常識で当たり前の事でも、優しい行動だとしても、ゆきには通用しない事があるんだ。

……、……でも。
それを俺は、不思議と嫌とか面倒くさいとは思わなかった。

誰だって、人は一人一人違う。
ただゆきは、それが普通の人よりもちょっとばかし特殊で、多いだけだーー。

むしろ、俺はそんなゆきを知りたいと、思ったんだ。
そう感じたこの時点で、自分がゆきに対してどんな感情を抱いてたのか、なんて決まっていたのに……。ゆきの心の傷を抉らないように心に決めた結果、俺が自分の気持ちに気付けるのはずいぶんと後になる。
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