スノウ2

☆リサーナ☆

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第1章(2)紫夕side

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「ーー……っ、へ?ゆ、ゆき?」

なんと、視線の先に居たのはゆきだった。
部屋の角隅で、床に直接尻餅を着いて両膝を抱えて俯き、ゆきうずくまっていた。

な、なんでこんな場所トコに居んだ?

ゆき?」

呼んでも反応が無くて、どこか具合でも悪いのかと心配になった俺が歩み寄ってそっと頭を撫でると、ビクッと反応したゆきが顔を上げた。
片膝を着いて屈んでいた俺はゆきと結構な至近距離で視線が重なって、胸がドキンッと弾む。

っ、何度見ても、この瞳……困るな。

ゆきの薄水色の瞳は綺麗過ぎて、苦手だ。見つめられると俺は何故か恥ずかしくなって、困る。
けど同時に、もっと見ていたいと感じるのも本音だった。

「っ、ここで……寝てんのか?」

「……」

「床、冷たいだろ?それに汚れちまうぞ?」

「……」

ドキドキする鼓動を抑えて声を掛けてみる。が、ゆきは何も答えず、目を伏せて逸らした。
その時、俺はふと思った。

「……。
お前、なんか前より痩せてね?」

思わず、そう言葉が出た。
思い違い、だろうか?俺の目に映るゆきは、三日前よりも痩せていて、何だか元気もない気がしたんだ。

「飯、食ってねぇのか?」

「……」

ゆきは何も言わない。
三日前、初めて会った時はほんの少しではあったが喋ってくれたのに、今日は何も話さない。
そんなゆきの様子が、俺は何気にショックだった。入院して、治療や療養して、もう少し元気になってるのを期待していたし、何より自分が来た事をもう少し喜んでくれると思っていた。
自分がそうだったみたいに、会ってない間も俺の事思い出したりして、会いに来るのを楽しみにしていて欲しかったんだ。

……そうだよな。
ゆきにとったら、俺も怖いおじさん、だよな。

初めて会った時、俺はゆきを怒鳴りつけて殴った。ゆきが生きる事に絶望していた本当の理由を知らなかったとは言え、それは消せない現実。
そんな俺がゆきに好感を持ってほしい、なんて無理な注文だと思った。
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