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序章(1)紫夕side
プロローグ1-1
しおりを挟むギシャアアアァァァーーー……ッ!!!!!
森を深く、深く進んだ先にある山岳地帯。もうすぐ春だと言うのに粉雪が降り注ぐその地域に、大きな魔物の鳴き声が響き渡る。
背中には上空を自由自在に飛び回る、まるで白鳥のような白い翼。普通の一軒家なんて簡単に潰せてしまう程に大きな体長も真っ白な鱗で覆われていて、その姿で辺りを飛び回られては陽の光の美しい照り返しで目がチカチカする。
俺の討伐対象、純白の飛龍ースノーフォールー。
コイツに挑むのは、もう何回目だろうか?
この数ヶ月、何度も何度も挑みながらも、俺は致命傷となる傷を与える事が出来ずに時だけが過ぎていた。
「っ、いつ見てもピンピンしてやがる……」
悔しい気持ちを抑えながらも、俺は魔物に強大なダメージを与える事の出来る武器ー魔器ーの「斬月」を構えて、攻撃する隙を狙っていた。
ハッキリ言って俺の魔器である大剣の斬月は、スノーフォールのように空中を飛び回る魔物相手にはかなり不利だ。
大剣は文字通り大きさも重さも普通の剣の何倍もある。その分振り下ろした際に大ダメージを与える事が出来るが、その強大な威力も相手に当たらなければ何の意味も持たない。
つまり相手を攻撃範囲内に入れなければ、どうする事も出来ないのだ。重い斬月を構えたままでは、上空にいるスノーフォールに近付ける程のジャンプ力を出すのは難しい。
「杏華や海斗の狙撃の有り難さ、痛感すんなぁ……」
何も出来ない俺を嘲笑うように上空を飛び回るスノーフォールを見上げながら苦笑いを溢して、かつて一緒に戦っていた仲間の存在の大きさを改めて痛感する。
しかし、もう、仲間はいないーー。
自らが選び、決めた、孤独の人生。
振り返って、感傷に浸ってる場合じゃねぇ。
前に進んで、俺は大切な人を必ず救うんだーー!!
俺は自分の心の中の弱さを振り払ってポケットから閃光玉を取り出すと、スノーフォールがなるべく低空に飛行してくるタイミングを見極めて……。顔面に向かって投げ付けた。
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