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(8)リディアside
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【病室】
「……っ。
……。……ん……」
重たい瞼をそっと開けた。
窓から差す、橙色の光。
……夕方?……。
私、まだ……生きてるんだ……。
ダルくて身体に力が入らない。
頭もボーッとしている私。
そんな私の肩を、ポンポンッと誰かが叩いた。
「リディアさん。お疲れ様でした!」
その声に、私はゆっくりと顔だけ横を向ける。
「おめでとうございます!
リディアさんの言ってた通り、女の子ですよ。」
奥さんの、声。
ボヤッとした視界に映るのは……。
奥さんの笑顔。
……そして。
「……。
!っ……。……ユ、イ……?」
奥さんの腕に抱かれている、小さな赤ちゃん。
フワフワのタオル生地の布に包まれた、ユイ。
見た瞬間、トクンッと胸が熱くなる。
涙が溢れて、止まらなくなる。
しっかり見たいのに、余計に視野が滲む。
「っ……ユイ。
ユイ……っ……ユ、イッ……」
震える声で、何度も名前を呼んだ。
嬉しくて。
愛おしくて。
触れたくなる。
っ……でも。
この子は、もう……私の子じゃない……ッ。
伸ばしたい手を布団の中で握り締めていると……。
「……リディアさん。
少し、失礼しますね。」
そう私に声をかけた先生がゆっくり身体を支えてくれて……。
私の上半身を起こすと枕で背もたれを作ってくれた。
すると、なんとか上半身を起こせた私の腕の中に……。
「ほら、ユイちゃん。お母さんですよ?」
と、奥さんがゆっくりと……ユイを手渡した。
私が驚いて、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま見つめると……。奥さんは私の涙をタオルで拭いながら微笑んでくれた。
「リディアさん。
ユイちゃんと一緒に、頑張りましょう?
……ねっ?大丈夫ですよ!」
私とユイを、引き離さないでくれた。
「……っ。
……。……ん……」
重たい瞼をそっと開けた。
窓から差す、橙色の光。
……夕方?……。
私、まだ……生きてるんだ……。
ダルくて身体に力が入らない。
頭もボーッとしている私。
そんな私の肩を、ポンポンッと誰かが叩いた。
「リディアさん。お疲れ様でした!」
その声に、私はゆっくりと顔だけ横を向ける。
「おめでとうございます!
リディアさんの言ってた通り、女の子ですよ。」
奥さんの、声。
ボヤッとした視界に映るのは……。
奥さんの笑顔。
……そして。
「……。
!っ……。……ユ、イ……?」
奥さんの腕に抱かれている、小さな赤ちゃん。
フワフワのタオル生地の布に包まれた、ユイ。
見た瞬間、トクンッと胸が熱くなる。
涙が溢れて、止まらなくなる。
しっかり見たいのに、余計に視野が滲む。
「っ……ユイ。
ユイ……っ……ユ、イッ……」
震える声で、何度も名前を呼んだ。
嬉しくて。
愛おしくて。
触れたくなる。
っ……でも。
この子は、もう……私の子じゃない……ッ。
伸ばしたい手を布団の中で握り締めていると……。
「……リディアさん。
少し、失礼しますね。」
そう私に声をかけた先生がゆっくり身体を支えてくれて……。
私の上半身を起こすと枕で背もたれを作ってくれた。
すると、なんとか上半身を起こせた私の腕の中に……。
「ほら、ユイちゃん。お母さんですよ?」
と、奥さんがゆっくりと……ユイを手渡した。
私が驚いて、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま見つめると……。奥さんは私の涙をタオルで拭いながら微笑んでくれた。
「リディアさん。
ユイちゃんと一緒に、頑張りましょう?
……ねっ?大丈夫ですよ!」
私とユイを、引き離さないでくれた。
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