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(7)リディアside

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【リディア28歳の秋/診療所の病室】

先生達のお陰で赤ちゃんはなんとか安定期に入って、私の状態も落ち着いていた。
時々胸が苦しくなったり、身体に力が入らなくなったりはしたけど……。
その度に鍵を握り締めてヴァロンの事を思い出した。

あと少し……。
赤ちゃんが産まれて来ても大丈夫な大きさに育つまで、私に時間を下さい。


「いい天気。
パパは、元気にしてるかな?」

病室のベッドの座りながら窓の外を眺めて、お腹の子供に語り掛けた時だ。


「……。
父親は、誰だ?リディア」

「!……ッ」

私に問い掛ける声に、ハッとした。
聞き覚えのある声に病室の扉の方を見ると……。

そこに居たのは、唯一私がまだ生きている事を知っていたマスターだった。


「っ……マスター?
な、なんで……ここに……?」

ドキッとして、私はお腹を隠すように掛け布団を引き寄せた。


病気の事。
残りの余生をこの小さな島で過ごす事。
夢の配達人になってから保護者代わりを務めてくれていたマスターには全て話していた。

……赤ちゃんの事、以外は。

この子の父親が誰かなんて、一生誰にも言うつもりなかった。
私の我が儘で、何も知らないヴァロンを困らせたくない。

彼をたくさん傷付けた私。
それを乗り越えて、今ヴァロンは必死に頑張ってくれている。
私の託した白金バッジを、輝かせてくれている。
そんな彼に、絶対に知られたくない。


「お前が、好きでもない男と寝る訳がない。
……。父親は、ヴァロンだろう?」

「……っ」

マスターの言葉に、涙が出そうになった。

”軽い女”、”誰とでも寝てる”……。
男を見下して、言い寄ってくる男を利用するように生きていた私は……。そう言われていた時もあった。
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