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(6)リディアside
6-5
しおりを挟むヴァロンは、もう私を見ずに……。
俯いたまま、家を出て行った。
私は何も、言えなかった。
私はゆっくりベッドから立ち上がると、自分の服を羽織る。
服を着たのに、寒い。
ヴァロンがいなくなった途端に、寒い。
私は部屋の出入り口に足を進めて、床に転がった金バッジを拾って握り締めた。
ヴァロンが捨てた、バッジ。
下剋上を成功させたあの日。
とても輝いていた彼を想い出す。
『言っとくが、俺はあんたの白金バッジを継承する気はねぇからな。
あっさり上に上がってたまるか。
他の奴の白金バッジを奪ってあんたに並ぶ。
……それまで、待ってろよ?』……。
真っ直ぐな言葉と瞳。
あれは素直じゃないヴァロンからの、精一杯の告白だった。
「っ……。
ごめん……な、さいッ」
押し寄せる後悔。
己の弱さから信じる事が出来なかった。
外は雨。
雨上がりの虹は……もう、見れない。
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