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(3)リディアside

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本当は分かってた。
こんな性格だから私は愛されない。
サヤみたいに甘える事なんて出来ない。
あんなに可愛く微笑む事なんて出来ない。

私は絵本のヒロインのように、可愛い女の子じゃないもの。
王子様が守りたいと思ってくれるような、小さくて可愛いらしい女の子じゃ……ない。

誰も私を女の子扱いなんてしてくれない。


再び涙が溢れそうになった私。

そんな私の顔を隠すように、ヴァロンが頭に被せてくれていた上着を……。
バサッと、掛け直した。


「……。
見てほしくねぇなら見ねぇよ。
……ただ、雨。強くなって来たから、行くぞ」

そう、ヴァロンの声が聞こえたと思ったら……。
大きな手が、私の手を取って駆け出した。


「っ……」

トクンッ……と、高鳴る胸。
私は走りながらヴァロンに引かれた手を、見た。


しっかり繋がれた手。
ヴァロンの綺麗な、指の長い大きな手。

昔、ヴァロンを闇市場から買って雨の中を一緒に走った事を思い出した。
あの時は、私がヴァロンの手を引いて走った。

小さな手だった。
その手が今では、私の手を包める位になっていた。
暖かい、大きな手。


私は、顔を少し上げて彼の背中を見た。

貧弱で小さかったヴァロン。
それが今では、逞しい男の背中。
頼り甲斐のある、守ってくれる背中。


私を暗闇から引き戻してくれる?
私を助けてくれる、王子……様?


「……ーーッ」

顔が信じられない位に熱くなって。
走っているせいなのか分からない位に、心臓がうるさい音を立て始める。


ヴァロンと出逢った時に感じた運命。

彼は、私の子供の代わりなんかじゃない。

いつか私はこの子に恋をすると、感じた予感。

この日、この時に……。
愛する人に変わる、予感だったんだ……。
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