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(2)ギルバートside

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【ギルバート17歳/港街】

ある日。
短期の仕事で夢の配達人の隠れ家がある港街にやって来た時だ。

大きな港街に戸惑っていると、僕の耳にある言葉が聞こえてきた。


『何故だ?
僕は君が望むなら、例え全てを棄ててでもっ……。っ……君を、離したくないッ……!』

トクンッと胸が熱くなる。
それは、僕が大好きな舞台の台詞だった。

声、だけ。
たった少しの、台詞だけだ。

演技など見ていないのに、惹きつけられる。


一体、誰がっ……?

高鳴る鼓動。
僕は辺りを見渡して、その声の場所を気付いたら必死で探していた。


『待っていてくれ……。
君を迎えに行く。……必ず、っ……必ずだ!』

……。

声が聴こえる場所には、すごい人集りが出来ていた。

人混みをかき分けて、その中心を見て……。
僕は眼を疑った。

そこに居たのは……。
白金色の髪と瞳をした、少年。

10歳くらいだろうか?
幼い、背の小さな少年だった。


……嘘、だろう?

あんな小さな男の子が、さっきの色っぽい声質で……。
あんな大人びた台詞を言っていたのか?

トクンッ、トクンッ……。
と、鼓動を感じながら僕はもう少年に釘付け。


少年は、観客に横姿で立っていた。
手を伸ばして、その先を見上げる視線は……悲しい切ない瞳。

愛おしい人が、本当にそこに居るような瞳。

少年の一人演技なのに、相手が……見える。


別れのシーン。
身分差の恋によって引き裂かれる、場面。

繋いでいた二人の手が、ゆっくりとスルリと離れて……。

男が、女の髪から落ちたリボンをゆっくりと拾う。
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