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第9章 (1)ヴァロンside
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そこに居たのは、リディアではなかった。
墓の前で屈んで、手を合わせてお参りをする一人の少女。
長い黒髪を左右に分けて三つ編みをしたその子は、とても儚げで小さい。
長身でスラッとしたリディアとは、似ても似つかない対照的な女の子だった。
その少女は不思議な子だった。
ギルバートの娘であるアカリに手紙を渡したかった、と言った。
しかも、リディアから託された手紙を……。
少女は自分の母親がリディアを看取った看護師だと言ったが、何故だか俺には腑に落ちない。
リディアと同じ香りを纏ったこの少女が、俺にはどうしても他人には思えなかった。
”リディア”……。
少女はリディアを呼び捨てにしている。
直接話した事もない人物を、礼儀正しいこの少女がそう呼ぶのはおかしい。
そして……。
俺は見てしまった。
リディアの石碑に書かれた、年号。
リディアの亡くなった年。
それは、俺が白金バッジを継承した年では……ない。
俺が白金バッジを継承した、次の年。
翌年の、6月15日と……刻まれていた。
ーーこれが。
マスターが隠し通していた……訳。
全てを欺いて……。リディアの死の真実を隠していた、本当の理由だった。
目の前の少女は、紛れもなく……リディアの娘。
そして、父親は……。
……
…………。
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