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第9章 (1)ヴァロンside

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【6月15日/丘にある墓地】

リディアが亡くなって17年。
俺は初めてこの場所を訪れた。

俺が白金バッジを取得して数年経ち精神的にも安定してきた頃、シュウの父親のマスター・ギャランが俺にリディアの墓のある場所を教えてくれた。
……けど、俺には此処に訪れる勇気がなかった。

頭では分かっていた。
理解しようとしていた。

リディアの死を。


未練がましく……。
墓を見なければ、いつかリディアがひょっこり戻ってくるんじゃないか……。そんな期待をしていたんだと思う。

空に架かる虹をもう一度見付けられたら、リディアがその下で微笑んでくれるんじゃないかって……。心の何処かで待っていた。

アカリを愛して結婚しておきながら、ずっと引きずっていた想いが今になって溢れて……。俺はまた大切な人を失いかけた。


もう、終わりにしなくては……。

現実を……。リディアの死を受け入れて、今度こそ愛する人を大切にして生きていこう。

そう決意して、俺は今日……此処に来た。


墓地は想像していた以上に広かった。

夢の配達人白金バッジのリディアの突然の病死は、当時ちょっとした話題になり新聞や雑誌の記者達がよく隠れ家付近をウロついていた。
俺が記者達を必要以上に嫌うのは、この時にかなりしつこくされたせいもある。

マスターもリディアの死については”病死”と以外は一切誰にも語らず、墓の場所も知っているのはごく一部の人間だ。

人口の少ない見つかり難い小さな島。
この無数にある墓の中にリディアの墓を建てたのも、きっと人目を欺くマスターの配慮だった。
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