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第5章 (2)ヴァロンside

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その叫びに、また、部屋の中がシーンとなって……。アカリが呆然と、俺を見つめていた。
その、潤んだ瞳からは、今にも涙が溢れそうで……俺の心に痛く滲みる。


”こんな事、したかった訳じゃない”……。

”俺は、あんたの身体が欲しかった訳じゃない”……。

あの日叫んだ思いが、フラッシュバックして蘇る。俺は頭を抱えると、首を横に振りながら震える声を絞り出す。


「……っ。ご、めん……。
俺ッ……な、に……やって……っ」


ずっと、抑えてきたのにーー。

自分でも気付いていた。人よりも激しい、誰よりも恐ろしい独占欲。

愛されたくて、愛して欲しくて……。言葉にならなかった想いが、心の中でドス黒く渦巻いて湧き上がる。


愛されたいと願った人は、いつも俺を愛してなんてくれない。

母さん。
なんでこっちを見てくれないの?

母親が見るのは、俺の頭脳と技術だけ。


父さん。
どうして認めてくれないの?

見た目も利き手も、否定された。


シュウ。
いつも一緒だと思ってた。

結婚して家族が出来たら、遠くなった。


リディア。
初めて俺の全てを生かしてくれた。

けど、俺の気持ちは……伝わらなかった。



家族も、親友も、愛する人も……。
大切な人はみんな、いなくなる……。

俺は誰の1番にも、なれなかった。


”最年少で白金バッジを取得した天才夢の配達人”…。
”依頼量、人気、実力、成績。
全てNo. 1の夢の配達人ヴァロン”……。

どんなに昇りつめても、どれだけ札束を積み上げても……。満たされない心。

ずっとずっと、空っぽだった。


そして、やっと見付けた……。俺に笑顔をくれた、アカリ。
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