111 / 297
第5章 (2)ヴァロンside
2-2
しおりを挟むその叫びに、また、部屋の中がシーンとなって……。アカリが呆然と、俺を見つめていた。
その、潤んだ瞳からは、今にも涙が溢れそうで……俺の心に痛く滲みる。
”こんな事、したかった訳じゃない”……。
”俺は、あんたの身体が欲しかった訳じゃない”……。
あの日叫んだ思いが、フラッシュバックして蘇る。俺は頭を抱えると、首を横に振りながら震える声を絞り出す。
「……っ。ご、めん……。
俺ッ……な、に……やって……っ」
ずっと、抑えてきたのにーー。
自分でも気付いていた。人よりも激しい、誰よりも恐ろしい独占欲。
愛されたくて、愛して欲しくて……。言葉にならなかった想いが、心の中でドス黒く渦巻いて湧き上がる。
愛されたいと願った人は、いつも俺を愛してなんてくれない。
母さん。
なんでこっちを見てくれないの?
母親が見るのは、俺の頭脳と技術だけ。
父さん。
どうして認めてくれないの?
見た目も利き手も、否定された。
シュウ。
いつも一緒だと思ってた。
結婚して家族が出来たら、遠くなった。
リディア。
初めて俺の全てを生かしてくれた。
けど、俺の気持ちは……伝わらなかった。
家族も、親友も、愛する人も……。
大切な人はみんな、いなくなる……。
俺は誰の1番にも、なれなかった。
”最年少で白金バッジを取得した天才夢の配達人”…。
”依頼量、人気、実力、成績。
全てNo. 1の夢の配達人ヴァロン”……。
どんなに昇りつめても、どれだけ札束を積み上げても……。満たされない心。
ずっとずっと、空っぽだった。
そして、やっと見付けた……。俺に笑顔をくれた、アカリ。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
【R18】幼馴染な陛下は、わたくしのおっぱいお好きですか?💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に告白したら、両思いだと分かったので、甘々な毎日になりました。
でも陛下、本当にわたくしに御不満はございませんか?
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる