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第3章 (2)シュウside

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任務に向かう前のヴァロンが気になった。
優秀なヴァロンが、演技や仕事じゃない限りあんなに自ら雨に打たれる訳ない。
彼の様子が徐々におかしい事には、仕事の度に顔を合わす私にはすぐ分かった。原因は、おそらくアカリさんとの夫婦生活。

ヴァロンはよく笑顔を見せるようになった。アカリさんいる時の彼は、特に良く微笑っていて、本当に幸せそうだった。

でも、それは最初のうちで……。次第にヴァロンは何処か昔に戻ったような雰囲気を漂わせ始めた。

それは、彼にとっての初恋の時と同じーー。ヴァロンがリディアに恋していた時と、よく似ていた。


ヴァロンは人に甘えるのが苦手だ。
普段軽そうなイメージとは違って、実はとんでもなく不器用で格好つけたがる。自分の好きな相手には、特にその傾向が強い。

本当は誰よりも寂しがり屋で、甘えたくて愛されたいのに、口にしない。冗談っぽくすませて本心を封印する。


ヴァロンはアカリさんを想う余り、自分の本心を封じて微笑い続けていた。アカリさんに嫌われたくなくて、我慢を重ねて……。心のバランスを失っている。
そこに、初恋の相手リディアの命日が近い事が重なった。


白金バッジを取得してからは、ヴァロンは仕事に没頭していた為平常心だった。
我が儘し放題の問題児。意地悪で性格が悪いと捉えられがちだが、そんな自由奔放な彼は生き生きしていた。
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