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第2章 (2)アカリside

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「……キスも。普通のしか、しないし」

ヴァロンに、口付けすら激しく求められた事がない。
いつも額や頬にそっとキスされて……。唇にも、優しくしか触れないキス。


「ーーアカリ。それは、少し……。
いや、だいぶ!ヴァロンと話し合った方がいいですわ!」

ずっと黙っていたモニカが力説する。


「だって……。それじゃあ赤ちゃんだって、アカリは産めないんですのよ?
手紙に欲しいって書いてたじゃない。お互い産まれたら遊ばせよう、って。男の子と女の子が産まれたら恋人になるかもね、って!」

モニカとの手紙に書いた夢。
結婚も同じ時期に出来たから、子供も同じ時期に出来るといいね、って。そしたらきっと、私達みたいに仲良しで楽しいだろうね、って。


「……ヴァロンはね。
赤ちゃんも、欲しくないの……かも」

私は今日レナとレイに聞いた事を、簡単にモニカに話した。


「……分かんないけど。両親に良い思い出がないと、自分が親になる自信がなかったり……。子供が好きじゃない人、いるんだって」

あくまで昔、本で見た知識。

ヴァロンはどうなの?
なんて、とても聞けない。


「……。
アカリ、ちょっといいかしら?」

「……え?」

モニカは席を立ち歩み寄って来ると、私の頬をパチンッと軽く叩いた。


「っ……!
え?……モニカ?」

驚いて見つめる私の前に、モニカは仁王立ちして見下ろす。
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