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第5章 (1)バロンの観察日記

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「……顔を上げて?ローザ」

近付いてそっと肩に触れると、ローザはようやく頭を上げて私を見た。

揺れた優しい瞳。
その瞳を見た時、私にはようやく分かったんだ。
バロンの言葉の意味が……。

『あの方は本当にここの事をよく考えている』
『お嬢様の事も、ですよ?』

いつもの厳しさは、私を想ってくれているから故。
不器用な彼女なりの愛情なのだ。


「……じゃあ。
これからも私の傍にいて下さい」

ローザの秘めた心が、私にはやっと見えた。
ようやく彼女と向き合う事が出来た。


「私には、
ローザが必要なんです」

「お嬢様っ……」

私が手を取って微笑むと、ローザは少し俯いて肩を震わせた。
その彼女からは、もう”怖い”なんて少しも感じない。


バロンが来るまで、私はずっと自分が独りだと思ってた。

……でも、それは全て私の勘違いだった。
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