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第3章 (1)夏がきて……。
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しおりを挟む「も、もちろんよ!」
私はそう言って、目の前の大きな手を取った。
顔を見合わせて笑うと、グイッと彼が私の手を引いて椅子から立たせる。
「はい。
では、練習に参りましょう。お嬢様」
「よろしくお願いします」
力強いのに優しい導き。
バロンがパートナーのダンスはすごく緊張するけど、リードしながら分かりやすく教えてくれるからとても安心出来る。
様々な事を私に教えてくれる彼には、日々驚かされてばかりだった。
その立ち振る舞いからは気品が溢れ、実はどこかの御曹司なのでは?と、疑ってしまう程だ。
「……お嬢様、痛いです」
「えっ?……あ!ごめんッ!」
考え事をしていて、うっかりバロンの足を踏んでしまった。
そんな時も、彼は私に合わせて立ち直らせてくれる。
「……余計な事は考えないで。集中して。
もう一度始めからいきますよ?」
「はい、すみません」
集中!集中!
私は雑念を振り払って、ダンスの練習に集中した。
そうしてバロンに身体を預けて刻まれるステップは、先程の自分からは想像も出来ないくらいに軽やかになっていくのだった。
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