161 / 172
第7章(4)ヴィンセントside
4-8
しおりを挟む
***
そして今日。
ツバサ君は見事、約束の第一歩を果たしてくれた。
『レノアを、大切にして下さり……。たくさん愛して下さり、本当に、ありがとうございましたっ』
そしてやっと、彼の笑顔を見られた。
その眩しい笑顔はかつてヴァロン殿がご家族を語っていた時と良く似ていて、その傍で共に微笑んだレノアーノを見た時。私は思った。
レノアーノを幸せに出来るのは、ツバサ君以外にいない。
そして何より、将来ツバサ君の口から幸せそうに語られる家族の話にレノアーノが居てほしいと思ったんだ。
そんな未来を想像したら、ついつい幸せな気持ちが溢れて笑みが溢れる。
さて、そろそろ邪魔者は本当に退散しよう、と盗み見をやめて振り返ると……。
「ヴィンセント……」
「!……ミネア」
申し訳なさそうな、罰が悪そうな表情のミネアが立っていた。
彼女の想いは、ずっと知っていた。それでも妻になってほしいと望んだのは私だった。
でも彼女はそんな自分が今でも許せなくて、後ろめたくて……。だから娘のレノアーノに厳しくしていたのだろう。
……けれど、良いんだ。
ヴァロン殿を想う心も含めて、愛してるーー。
「護るよ、ずっと」
「!……え?」
「君も、レノアーノも、レオも、私の宝物だから」
「っ、……ヴィンセント」
目の前で初めて涙を流すミネアを、私はそっと抱き締めた。
初めて、本当に彼女に触れられた気がした。
そして今日。
ツバサ君は見事、約束の第一歩を果たしてくれた。
『レノアを、大切にして下さり……。たくさん愛して下さり、本当に、ありがとうございましたっ』
そしてやっと、彼の笑顔を見られた。
その眩しい笑顔はかつてヴァロン殿がご家族を語っていた時と良く似ていて、その傍で共に微笑んだレノアーノを見た時。私は思った。
レノアーノを幸せに出来るのは、ツバサ君以外にいない。
そして何より、将来ツバサ君の口から幸せそうに語られる家族の話にレノアーノが居てほしいと思ったんだ。
そんな未来を想像したら、ついつい幸せな気持ちが溢れて笑みが溢れる。
さて、そろそろ邪魔者は本当に退散しよう、と盗み見をやめて振り返ると……。
「ヴィンセント……」
「!……ミネア」
申し訳なさそうな、罰が悪そうな表情のミネアが立っていた。
彼女の想いは、ずっと知っていた。それでも妻になってほしいと望んだのは私だった。
でも彼女はそんな自分が今でも許せなくて、後ろめたくて……。だから娘のレノアーノに厳しくしていたのだろう。
……けれど、良いんだ。
ヴァロン殿を想う心も含めて、愛してるーー。
「護るよ、ずっと」
「!……え?」
「君も、レノアーノも、レオも、私の宝物だから」
「っ、……ヴィンセント」
目の前で初めて涙を流すミネアを、私はそっと抱き締めた。
初めて、本当に彼女に触れられた気がした。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

悪役令嬢になりそこねた令嬢
ぽよよん
恋愛
レスカの大好きな婚約者は2歳年上の宰相の息子だ。婚約者のマクロンを恋い慕うレスカは、マクロンとずっと一緒にいたかった。
マクロンが幼馴染の第一王子とその婚約者とともに王宮で過ごしていれば側にいたいと思う。
それは我儘でしょうか?
**************
2021.2.25
ショート→短編に変更しました。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる