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第7章(3)ツバサside
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しおりを挟む「っ、……私からも、言わせて下さい。
お父様、ありがとうっ。いっぱい、い~っぱい!本当に、ありがとう!」
俺の隣で涙ぐみながら微笑んだレノアが、とても幸せそうに言った。とても可愛らしい、少女のような笑顔で……。
しかし。そんな俺とレノアを交互に見て、ヴィンセント様は複雑そうな笑みを浮かべて言う。
「おいおい。何だかこれでは、もうお嫁にやってしまうみたいではないか。
言っておくが、今日の事とお前達の結婚の話は別だぞ!」
「!っ、け、結婚?!」
「!っ、そ、そんなつもりじゃ……ッ」
ヴィンセント様の"結婚"と言うフレーズに俺とレノアは過剰に反応して、あっという間に顔を真っ赤にした。まだまだそう言う話に初心な俺達。
その反応を見て、ヴィンセント様は安心したように笑う。
「ハハハッ。その様子じゃ、まだもう少しは安心、かな?……レノア」
「は、はい!」
「良かったらツバサ君に邸内を案内してあげなさい」
「!……お父様」
案内してあげなさい、と言う気遣いの言葉に嬉しそうに表情を綻ばせるレノア。その頭をそっと撫でると、ヴィンセント様は視線を俺に移す。
「ツバサ君」
「は、はい!」
「忙しいとは思うが、良かったら少しだけでも娘の話し相手をしてやってくれ。……頼めるかな?」
頼めるかな?ーー。
ヴィンセント様のその言葉は俺の心に優しく沁み渡るようなのに、重い、重い言葉に感じた。その短い言葉の中に、上手く語る事が出来ないたくさんの想いがあるような……。
そして俺は、その言葉に応えたいと思った。
「はいっ、お任せ下さい!」
俺の返事を聞くとヴィンセント様は微笑みながら頷いて、その場を去って行った。
俺とレノアを、二人きりにしてくれたんだーー。
ヴィンセント様が俺を信じて与えてくれた貴重な時間。
窓から射し込む陽が彼女の赤茶色の髪を夕陽色に輝かせ、大切なあの日を思い出させてくれる。
……もう、二度と迷ったりしない。
俺は決意を固めて、今度こそレノアに伝える事にした。
「長い間待たせて、本当にごめん」
「!……っ、ツバサ?」
今を大切に、もう逃してはいけないーー。
そう思った俺が口を開くと、突然の真剣な言葉と雰囲気にレノアは大きな瞳を更に見開いた。
俺はしっかりと向き合って、顔も、瞳も、心も彼女に真っ直ぐ向けて伝える。
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