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第6章(6)ツバサside
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そんな母さんに甘えたまま、「はい、行ってきます」なんて言えない。しっかり、自分の口で伝えなくては……。
俺の、決意をーー。
「母さん。俺、進学しない」
「うん」
「学校辞める」
「うん」
「俺、夢の配達人になりたい」
「うん」
「好きな子が、いるんだ」
「……そっか」
「白金バッジの、夢の配達人になる」
「うん」
「今後はその子の為に……。
いや、自分の夢の為に、俺は生きたい!」
俺の言葉に、ずっと相槌を打っていた母さんが大きく満足気に頷く。
「……うんっ!
それでいい。自由に羽ばたきなさい、ツバサ!」
この瞬間、俺の足枷は砕けてなくなった。
大きな音を立てて砕けるんじゃなくて、静かに、サラサラと砂のように、優しく、消えていったんだ。
「……でも、1つだけ気になる」
「え?」
「好きな子、って……母さんより?」
「!……え?」
「昨日母さんが初恋って言ったじゃない?その子と母さん、どっちが好き?」
「ええっ?!」
母さんは、俺を揶揄ってそう質問した。
でも、拗ねた表情をした母さんの演技があんまりにも迫真だったから、騙された俺は結構本気で戸惑う。
「そ、そんなん……比べられねぇよっ。
母さんと、その子は……どっちも大事で…………」
「ーーふふっ、あははははッ……!!」
そしたら、引っかかった俺を見て、母さんが笑った。
大きな声を出して、昔みたいに、笑った。
全てを乗り越えた、証。
俺も、母さんも、しっかりと明るい未来を歩み始めた。
……
…………。
そして俺は、母さんから受け取った父さんのスーツに着替えると、始まりの場所へ向かった。
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