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第6章(3)ツバサside
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しおりを挟む「ーー防ぐとはさすがだね、ツバサ」
自分の前にフッと影が出来て、優しい懐かしい声が聞こえた。
それなのに……。優しくて、懐かしい声の筈なのに俺の心と身体はブルッと震えた。
相手が誰なのか分かりながらも信じられなくて、俺はゆっくりと目の前に立ちはだかる人物を見上げる。
「ミラ、イ……さん?」
俺が名前を口にすると、目の合ったミライさんは茶色の髪を風に靡かせながらニコッと優しく微笑った。動きやすい男性用の緑色のチャイナ服に身を包んだその姿も、優しい笑顔も昔と変わらない。
でも、さっきの攻撃は……。俺に仕掛けた蹴りは、確かな殺意が溢れたものだった。
防御が間に合ったから良かったものの、まともにくらっていたら、顔の骨が砕けて、下手したら首が折れて……、……。
「……ーーいやっ!放してッ……!!」
「!!……レノア!?」
茫然としていた俺の耳に届いたレノアの叫び声。我に返って視線を向けると、頭にターバンを巻き、服装が白地のマキシ丈の……そう、ドルゴア地方の衣装を身に纏った数人の人物が彼女を取り囲み、捕らえていた。
「ははっ、困ったねぇ。レノアちゃん昔からお転婆だったけど、成長してもやっぱりじゃじゃ馬なんだなぁ~」
「レノアッ……!!」
「おっと、邪魔するなよツバサ」
「!……ミライさん」
「僕の任務を妨害するつもりなら、次は確実に仕留めるよ?」
レノアの元に駆け寄ろうと立ち上がった俺の耳元で、ミライさんが囁く。
「っ……任、務?」
「恍けるなよ、分かってるんだろ?僕の今の雇い主はドルゴア王国第一王子サリウス様。
今日はその花嫁候補であるレノアーノ様を連れ戻しに来たのさ」
ミライさんの雇い主が、ドルゴアの第一王子サリウスーー。
この場の状況を見て、混乱しながらもその可能性を考えなかった訳はない。
けど、信じたくなかった。何故なら"それ"はミライさんが、俺にとっての"敵"となる事を意味しているからだ。
昔、俺の夢の為に師匠として力を貸してくれて、全力で応援してくれた憧れの人が……。
今、俺の夢を阻む為に、厚い壁として立ちはだかっていた。
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