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第6章(2)ツバサside
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しおりを挟む「うちの店のちょっとした拘りでしてね。耳飾りはイヤリングのみなんです。
今時の若い子からしたら、時代遅れかな?」
「いいえ、そんな事ありません!ほらっ」
苦笑いしながら尋ねる店主さんにレノアは首を横に振ると、自分の左右の耳を指差しながら笑顔で見せる。
「私、耳に穴あけてないんです。なんか、怖くて……。
だから、ピアスよりイヤリング派です!おじさんのお店、とってもいいと思いますよ。私は大好きですっ」
「っ~~……!!」
またまたレノアの可愛さに、俺は胸を貫かれる。
そうだよ。こういう所がまた、レノアの良いところなんだよ。
ピアスよりイヤリング派。一見今風の女の子なのに派手じゃないというか、真面目というか……。
彼女の良さがどんどん溢れてきて止まらない。
店主さんもそんなレノアの言動に、驚いたように目を見開いていた。そして、とても優しい笑顔になると、懐かしむように呟く。
「また、その台詞が聞けるとは思わなかったよ」
そう言って、店主さんは自分の作業机の上に飾られていた写真立てを左手で取り、少し見つめた後に俺達にも見せてくれた。
そこに映っているのは今より若いおそらく二十代の店主さんと、素朴だけど可愛らしい女性。店主さんが女性の肩に腕を回して抱き寄せて、二人とも幸せそうに仲良く微笑っている。
「素敵な写真!お隣は奥様ですか?」
その写真を見たレノアが恋話が好きな女の子、って表情でウキウキしながら尋ねた。俺も素直に素敵な写真だな、と思って一緒に眺めてた。
でも、この後に続く店主さんの話にこの場の空気は変わり、別の意味で釘付けになる事となる。
「はい、妻です。この写真を最後に、亡くなった……」
「え、っ……?」
「この世界で、なかなか思うようにいかなかった私をずっと支えてくれた妻でした。いつか二人で小さな店でもいいから持ちたい、という夢をみて……。
けれど結局、貧乏で苦労ばかりさせて……。私が、妻を殺してしまったようなものなんです」
「……」
「『emina』。この店名は、妻の名前なんです。
お嬢さんのように、耳に穴を開けるのが怖い、って。だから私は、彼女に似合うイヤリングを今も作り続けています」
俺はその話に、ただ黙って写真を見つめる事しか出来なかった。
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