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第4章(2)ツバサside
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しおりを挟む『きゃ~っ。これ、すごく美味しそう!』
『あはは。よし、俺が食べさせてあげるよ』
『ホント?』
『ああ。ほら、あ~ん!』
イチャつくカップルの行動に合わせて、ライがアテレコ。
その台詞は行動とものすごく合っている。が、俺はライの変に裏返った女言葉と、妙にカッコつけた男言葉に思わずプッと笑った。
すると、それを見たライは嬉しそうに続ける。
『いや~ん、美味しい~♪』
『それは良かった』
『ねっ?ダーリンにも食べさせてあげる~!』
『ははっ、俺はいいよ』
『え~!』
『……俺は、ケーキよりもお前が食べたいな』
『!……も、もうっ!何言ってるのよ!エッチ~!』
語尾の「エッチ~!」に合わせて身体をくねっとさせるライの姿は最高に愉快。でも、ここは店内だし声をあまり出さないように堪えて笑っていると、俺の様子に安心したライがニッと歯を見せて笑った。
ライのお陰で少し軽くなった俺の心。
食べたい物を大体取り終わり自分達のテーブルに戻ると、ランはまだ物色中なのか不在。いつも彼女が中心で大体三人一緒に行動している俺達にとって、ライと二人きりになる時間はなかなか珍しい事だった。
可愛らしい席に男二人きり、というこの状況はかなり微妙だが、ライに聞きたい事があった俺にとっては絶好の機会。俺はずっと、ライと"男同士の会話がしたい"と、思っていたから……。
しかし。"それ"は、今までずっと話したい思っていた事なのだが、どう話したらいいのか分からない。
早くしないとランが戻って来てしまうのに……。
なかなか話を上手く切り出す事が出来ないでいると、ライが先に口を開いた。
「あ~やっぱ、羨ましいよね~」
「っ、……何が?」
「さっきのカップル!仲良し~って感じでさ、ホント羨ましいよ~!
……この後はどっちかの部屋に行って、イイ事しちゃうのかな?」
こういう場だからか語尾の部分は少し声を潜めつつも、ニヤニヤしながら面白そうにライが耳打ちしてくる。その言葉に、ドキンッと言うか俺は内心ギクッとした。
何故ならその内容は、俺がライに聞こうと思っていた事にあまりにも近かったから……。
これを聞く事は俺にとってかなり勇気がいる事。だが、今回を逃したら聞けない気がして話を切り出す。
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